2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12620043
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中西 正 神戸大学, 大学院・法学研究科, 教授 (10198145)
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Keywords | 倒産法 / 企業再生 / セイフティーネット |
Research Abstract |
優先権は無担保債権者に優先した満足を与えられるにもかかわらず、原則として公示されることはなく、しかも満足の対象も特定されていないことから、公示されない担保権同様、債務者の財産状態を隠蔽するものと位置づけられている。角度を変えていうなら、もはや支払不能だとして債務者の事業を停止せしめたとき、優先権の額が多ければ、債務者の財産状況の実態はそれよりもずっと悪くなっており、一般の無担保債権者からすればもっと早い時期に債務者の事業を止めるべきであったということになるわけである。 そこで、この問題についての、ドイツ破産法とアメリカ合衆国連邦倒産法の規制の歴史的展開を実証的に研究した。 1887年のドイツ破産法は、優先権が多すぎてこのような弊害が生じたため、不動産上の優先権を一掃し、動産上の優先権は全て一般の無担保債権とした。ドイツ破産法は当初非常に効果的に機能したが、その後歴史的経緯を忘れ数多くの優先権を創設してしまったことから、倒産法は再び機能不全に陥った。歴史は繰り返されたのである。そこで、1994年の新倒産法が、より徹底して優先権を廃止するに至った。 アメリカ連邦倒産法は、倒産法は連邦法であるが、優先権か否かを決定する実体法は州法である。すなわち、州法は、弱者保護の名目で数多くの優先権を創設し、それが倒産法で尊重されることとなった。そのため、連邦倒産法も機能不全に陥ったとされている。これを回避するため、チャンドラー法で、州法が作る優先権を可及的に削除する連邦は算法の規定が創設され、この規定はその基本構造を変えることなく現在も維持されている。 以上から、優先権が倒産手続にもたらす弊害と、それを除去するための法技術につき、詳細な理解を得ることができた。ただ、以上の成果を論文にすることは果たせなかった。しかし、今年度中には現在出版が予定されている書籍の一部として公刊できるものと期している。
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Research Products
(1 results)