2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12620044
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
鈴木 博人 茨城大学, 人文学部, 助教授 (90235995)
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Keywords | 親権 / 親の配慮 / 後見 / 児童虐待 / 職務後見 / 里親制度 / 養育家庭 / 児童ならびに青少年援助法 |
Research Abstract |
初年度の研究は、親権制限制度に関する文献研究とドイツでの聞き取り調査を行った。親権(ドイツ民法では親権という用語はすでに1979年法により廃止されていて、代わって配慮権という用語が用いられている。用語の変更は、単なる言葉だけではなくて、当然その内容の変化も伴っていることに注意)制限制度について、まずは、どんなときに親権制限が問題になるかという典型的な場合として児童虐待についての法的対応をドイツの民法とKinder und Jugendhilfegesetz(以下ではKJHGと略称する)について見た。その結果明らかになったことは、次のような点である。 ドイツでは、児童虐待について、アメリカや日本のように、虐待防止法のような特別法によって対応しているのではなくて一般の児童保護法制の中で対応しているということである。一般の児童保護法制とは、民法の親の配慮法規定とKJHGである。あえていえば、KJHGは、日本の児童福祉法に対応する。KJHGのいくつかある特色の一つは、強制という契機を持っていないということである。強制という要素が加わるときには、必ず司法判断が下される。司法判断を求めるかどうかの尺度も、また裁判所が判断を下す基準も民法1666条が規定している子どもの福祉が危険にさらされているかどうかである。そして、親が原因となる作為・不作為により子どもの福祉が危険にさらされているということになると、その作為・不作為に親の故意過失とは無関係に、必要な親の配慮権制限が行われるということである。ここで注意しなくてはならないのは、配慮権制限の捉え方が日本とドイツでは異なるということである。ドイツで必要に応じて配慮権が制限されるのは、親の権利を尊重して、できるかぎり親子関係を断ち切らないために行われるのである。例えば、親の居所指定権だけを制限し、養育家庭(里親)に委託しつつ、実親には養育家庭を訪問しての子どもとの接し方を学ばさせることにより最終的には親子統合を図っていくというふうにである。 このような対応を可能にしているのは、法制度の上だけではなく、ソーシャルワーカーの専門性がきわめて高いということ、さらに里親制度が活用されているからである。
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