2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12620044
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Research Institution | CHUO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
鈴木 博人 中央大学, 法学部, 教授 (90235995)
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Keywords | 親権 / 親の配慮 / 児童虐待 / 親権制限 / 公的後見 / 団体後見 / 親権の一時停止 / 未成年者後見 |
Research Abstract |
今年度は、本研究計画の最終年度にあたる。したがって、3年間の研究成果の取りまとめを行った。本研究はドイツ民法と児童ならびに少年援助法による親権制限と子どもの福祉の保護制度を総合的に把握し、それを踏まえて日本法の未整備状態を浮き彫りにするものとなった。 ドイツ法では、基本法に親の権利条項が設けられていることもあり、民法上の親の配慮権(日本法でいうと親権に近い)に制限が加えられても、それは親としての権利を否定されたことにはならない。親の配慮権の制限は子の福祉・安全を確保するために必要かつその限りでのみ行われなくてはならないのである。親の配慮権制限も、親に対する制裁的意味をもって行われるのではなくて、親サイドから見れば、親であり続けるために必要であるがゆえに行われるのだといってもよい。そして、子どもの時間感覚を基本にすえて、親子の絆が断ち切られるような事態に至ると、今度は全面的な親の配慮権の剥奪が裁判所によって宣告されるのである。このときには、基本法上の親の権利も剥奪されるということになる。法律上親であることを実親にやめてもらうということである。このような一連の流れの中で、ドイツ法では親の配慮権制限のあり方は細分化されている。財産管理権だけが制限される時もあれば、居所指定権だけが制限される時、あるいは、配慮権が全面的に剥奪される時もある。それぞれの制限の程度に応じて、子の法的保護制度が設けられている。配慮権の一部制限のときには保護制度(Pflegescaft)が、全部制限のときには後見制度(Vormundscaft)が設けられている。そして、これら制度の上で実際に子の法定代理人たる役割を担うのは、多くの場合少年局ならびに民間団体である。いわゆる公的保護・後見である。この意味では子の保護に一分の隙間もないような制度構築がなされているといえるのである。
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