2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12620057
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
朝見 行弘 福岡大学, 法学部, 教授 (00151051)
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Keywords | 製造物責任 / 無過失責任 / 厳格責任 / 欠陥 / 製品安全 / EC指令 / 裁判外紛争解決機関 / リコール |
Research Abstract |
本研究は、各国における製造物責任法の概要と運用状況を明らかにすることによって、製造物責任理論の国際的な調和を図ることの必要性と可能性についての検討を行うことを目的とした3ヵ年計画である。そして、平成13年度においては、初年度に行った米国における製造物責任訴訟と製造物責任理論の現状についての現地調査結果の検討を行うとともに、欧州各国における製造物責任支障と製造物責任理論の現状を明らかにするための現地調査を行うことによって研究の展開を図るものとした。 その結果、欧州においては、1985年に採択された製造物責任に関するEC指令が1999年に改正され、さらに見直し作業が進められていることが明らかになった。1999年の改正は、それまでEC指令の対象から除外されていた未加工農産物について、英国などにおけるBSE(Bovine Spongiform Encephalopathy)〔牛海綿状脳症(いわゆる「狂牛病」)〕の発生を受けて、これを無過失責任にもとづく製造物責任の対象に含めるとしたものであり、わが国における製造物責任法のあり方にも影響を及ぼす可能性のある議論を見出すことができる。さらに、現在検討されている指令の改正は、開発危険の抗弁や証明責任などについて、より消費者に有利な原則を導入しようとするものであるが、産業界の抵抗は強く、また加盟国間の考え方にも大きな差がみられるものの、今後の世界的な製造物責任理論の動向を見極めるうえでは、きわめて重要な意味を有しているものと思われる。 さらに、欧州においては、2001年12月、1992年に採択された一般製品安全に関するEC指令が改正され、米国におけるブリジストン=ファイアストーン事件、わが国における雪印牛乳中毒事件や三菱自動車クレーム隠し事件などとともに、製品安全に対する関心や取組みが急速に世界的な高まりを見せている。そして、この製品安全やリコールの問題は、製造物責任とともに、欠陥製品をめぐる消費者保護において車の両輪をなすものであり、製造物責任理論の国際的調和の方向性が明らかにされた後においては、製品安全規制やリコールに関する国際的調和について検討を行うことが重要であり、急務であることが明らかになった。
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