2001 Fiscal Year Annual Research Report
相手方による差別価格の独禁法上の規制に関する比較法的実証研究
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12620060
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
澤田 克己 新潟大学, 法学部, 教授 (40187290)
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Keywords | 差別対価 / ドイツ / 競争制限禁止法 / EC競争法 / 差別的取扱い / 独占禁止法 / 競争政策 / 支配的地位の濫用 |
Research Abstract |
ドイツにおいては、1998年に競争制限禁止法(GWB)の第6次改正があった。それにより、価格に関する規制を置いていなかった同法に20条4項2文が新設され、原価割れ販売規制が開始した。この条項は相手方による差別価格の規制の可能性を十分に含んでいる。差別禁止制度についてはEC競争法との対応関係の形成の方向はとられなかったために、第6次改正による変更はほとんどない。したがって、ドイツ法における差別禁止制度は、EC競争法とは異なる独自の路線をとっている。 GWBにおける差別対価規制に関してまず注意すべきなのは、それは主に市場支配的地位の濫用の規制の枠組みのなかで捉えられていることである。差別対価規制は、濫用規制のなかでも、とくに、いわゆる搾取的濫用の規制として行われ、したがって、複数の価格のなかの高価格が過度に高い場合が、主な規制局面となる。ただし、差別対価が例えば掠奪行為に該当する場合には、排除行為としての側面から市場支配的地位の濫用の規制にかかり・低価格が問題となり得ることはもちろんである。しかし、低価格が濫用に該当するとの証明は実務的に困難であることなどのゆえに、むしろ例外に位置づけられる。商品または役務の廉売が行われている場合に、その価格が、他の地域または相手方に対する価格と比べて著しく低廉であることに着目して規制する、わが国の差別対価規制とはアプローチが逆であることに、とくに注目できる。 ドイツ法においては、差別価格規制は市場支配的地位の濫用の規制の枠組みの中で行われている。わが国の独禁法の抜本的な改正の必要性が取りざたされる現在、(不公正な取引方法としての間接的な規制は別として)市場支配的地位の濫用を規制する直接の根拠を持たないわが国の独占禁止法にとり、重要な示唆があると思われる。
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