2001 Fiscal Year Annual Research Report
リストラ解雇と雇用保障法制-日・韓・中の比較法的視点からの研究-
Project/Area Number |
12620065
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
李 じょん 九州大学, 大学院・法学研究院, 助教授 (60311833)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 昇 九州大学, 大学院・法学研究院, 日本学術振興会特別研究員
野田 進 九州大学, 大学院・法学研究院, 教授 (90144419)
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Keywords | 解雇制限 / 雇用保障 |
Research Abstract |
本研究の結果、日本を中心とする韓国や中国の場合、労働市場を始め、雇用関係、さらには法意識において、欧米諸国のそれとはかなり異なることが明らかになった。そこで、最近、日本を中心に進められている労働市場や労働法における規制緩和の動きは、アメリカ一辺倒的な変化を追求する現象が目立っている。しかし、長期的な眼目からみれば、日本は日本独特の雇用慣行があるので、これを尊重する形で、必要に応じて修正していくべきなかろうか。これは、韓国や中国においても同じ事が言える。 最後に、日本に限っていうと、ここ数年、解雇法制の例をみると、欧米諸国のように明確な法律の制定や改正はないにしても、少なくとも判例法においてはこれまで全く予測すらできなかった現象が起こっている。東京地裁中心の一連の整理解雇に対する新しい判断基準の提示や判例上における変更解約告知理論の許容などは、その典型例である。 このような変化が起きている背景には、様々なことが原因として挙げられるが、その中心には、労働市場の柔軟化や規制緩和があると思われる。日本は、ご周知のように、内部労働市場は発達していても、欧米のような外部労働市場やその中間的な性格の労働市場はあまり活性化していない。他方で、新自由主義や労働経済分野におけるグローバル化が急激に進むにつれ、伝統的労働市場のメカニズムや日本的雇用慣行が崩れており、就業形態の多様化による労働の質的・量的変化も著しい。それだけではなく、日本では、最近、不当解雇(特に整理解雇)の正当性判断や個別的労働条件の変更問題をめぐって活発な議論が行われている。 しかし、これは単なる法解釈論ではなく、ある意味で、これらの問題対応できる欧米諸国のように法的ルールを形成している過渡期的現象かもしれない。ともあれ、解雇問題や労働条件の変更問題めぐって行われている現在の議論が、どのような方向に展開し、帰着するのか注目される。
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[Publications] 李 じょん: "韓国における雇用調達と雇用保障制度"日本労働法学会誌. 96. 29-45 (2000)
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[Publications] 李 じょん: "東アジア諸国の労働法制の交錯に関する研究"法政研究. 68(1). 1-24 (2001)
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[Publications] 李 じょん: "解雇紛争解決の司法的救済に関する比較法的研究"韓国労働法学学会誌. 11. 30-50 (2001)
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[Publications] 李 じょん: "韓国労働法の形成と変遷"法政研究. 68(3). 1-32 (2001)
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[Publications] 李 じょん: "韓国労働法の完成とその特徴"法政研究. 68(4)(掲載確定). 39-64 (2002)
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[Publications] 李 じょん: "解雇紛争解決の法理"信山社. 415 (2001)
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[Publications] 李 じょん: "整理解雇と雇用保障の韓日比較"日本評論社. 326 (2002)