2001 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツにおける外見的独立営業者(Scheinselbstandige)の法的地位
Project/Area Number |
12620066
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Research Institution | OSAKA CITY UNIVERSITY |
Principal Investigator |
西谷 敏 大阪市立大学, 大学院・法学研究科, 教授 (70047314)
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Keywords | 外見的独立営業者 / 労働者概念 / 社会保険加入義務 |
Research Abstract |
これまで労働法と社会保険制度は、労働者(Arbeitnehmer)の概念を基礎に構築されてきたが、使用者が主として労働法上の責任や社会保険加入義務を潜脱する目的で、実質上の労働者を「独立営業者」と偽装して使用するというケースが目立ってきた。これにどのような対応策をとるべきかは、各国に共通する喫緊の課題となっているが、ドイツでは、労働法上の扱いと社会保険制度上の改革とが錯綜しつつ問題が展開している。すなわち、1999年の社会法典第4篇の改正により、その7条4項において、社会保険の加入義務ある「就業者」に関する推定規定がもうけられた。それによると、労働者を雇用していないこと、継続的に一人の委託者のために働いていることなど5つのメルクマールをあげ、そのうち最低3つを充足している場合には「就業者」と推定しようというのである。この規定の具体的実施のために、1999年12月20日付けで、社会保険団体連合の回状が出されている(ドイツ出張に際して入手)。この規定は、直接的には社会保険制度の加入義務に関係しており、労働法分野の「労働者」概念に影響を及ぼすものではないが、私のドイツにおける労働法研究者や労使当事者への聞き取り調査によれば、多くの人たちはそれが間接的には労働法上の議論に影響を及ぼすであろうとの見通しをもっていた。現に、労働法の分野では、社会法典の改正を受けて、新たな議論が進行中である。いずれにせよ、自営業を偽装しつつ実質的な労働者を雇用するという事態を防止するために、ドイツの社会法典のとる態度とその影響を受けた労働法の議論はきわめて興味深いものであり、今後、日本における法的処理にあたって大いに参考にすべきものと思われる。
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