2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12620067
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
村山 眞維 千葉大学, 法経学部, 教授 (30157804)
|
Keywords | 刑事訴追 / 起訴裁量 / 検察官 / 日仏比較 / 比較研究 |
Research Abstract |
日本とフランスの検察庁において聴き取りおよび観察による実態調査を行った。 わが国では、起訴および求刑において考慮すべき事柄が刑事訴訟法によって定められているほか、それをより具体化した一定の規準が全国的に定められている。これは、しかしながら、個々の事件における処理において検察官による判断の幅を排除するほど具体的なものでは必ずしもない(事件の種類によっても異なる)。このため、決裁その他の制度的仕組みが、全国的に一律な処理を確保するために存在しており、それによって相当に高い程度の全国的な画一的な処理が実際にも実現している(ただし、地方による多少の相違がないわけではないようである)。これに対して、フランスでは、同じく全国的な処理規準が司法省によって定められているほか、リージョナルな規準が定められており、さらに各県(departement)毎に処理規準がより具体化された形で定められている。したがって、フランスでも起訴および求刑の規準は、各検察庁毎に見ると極めて具体的な形で定められているが、各県における規準は必ずしも同一ではないようである。また、フランスには、わが国の決裁のような制度的仕組みは存在しない。このため、検察官の間の判断の相違は不可避であるが、しかし、実際にはそうした相違は、少なくとも個々の検察庁単位で見る限りそれほど大きくはないようである。 起訴および求刑における刑事政策的考慮は、わが国においてもフランスにおいても、何らかの一般的方針としての刑事政策が定立されているわけではなく、罪種に応じた個々の判断規準の設定およびその運用において、基本的にどのような方針での処理が望ましいのかという形で考慮されている。 フランスにおいては、わが国の起訴猶予に当たる判断がなされる場合、刑事訴追に代わる代替的処理として、被疑者の同意を前提とした刑事調停や医療措置が制度化されている。このため、検察官の起訴・不起訴の判断に関わる権限は、フランスでは実質的により大きなものとなっていると言えよう。ただし、この点は、弁護人の役割の相違とも関連している。わが国では、弁護人の活動の一部として被害者との示談が行われるが、フランスの弁護人の活動は、被疑者・被告人の権利の確保と法的主張に限定される傾向があるようであり、このため、被疑者段階において弁護人が被害者との示談を行うことは通例ではないように見える。このため、起訴猶予の条件としての刑事調停が、弁護人の仕事ではなく、独立の手続として分化していると見ることができる(同じく、起訴された場合には、被害者は被告人の弁護士との示談によってではなく、附帯私訴で民事賠償を求めることが通例である)。
|