2001 Fiscal Year Annual Research Report
「回復的司法」モデルの展開とわが国における適用可能性
Project/Area Number |
12620070
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Research Institution | Sapporo Gakuin University |
Principal Investigator |
城下 裕二 札幌学院大学, 法学部, 教授 (90226332)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 久美子 札幌学院大学, 法学部, 助教授 (50305885)
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Keywords | 回復的司法 / 修復的司法 / 刑罰理論 / 量刑事情 / 意見陳述権 / VIS / 仮釈放 |
Research Abstract |
本研究では、近時、刑事司法制度の新たなパラダイムとして欧米で注目されている「回復的司法(修復的司法」(restorative justice)モデルを分析し、併せてわが国における同モデルの適用可能性について検討を行った。同モデルは、従来の「応報型刑事司法」モデルと比較するとき、刑事手続きにおいて「忘れられた存在」とされてきた被害者の保護を直接的な形で考慮できる点で、確かに優れた面を有している。問題は、これまでの「応報型刑事司法」モデルと完全に訣別するならば格別、わが国のように同モデルを基盤とした刑事司法制度を前提とする場合に、「回復的司法モデル」の要請をどこまで受容していくことが可能かである。本研究では、主として量刑および行刑段階に着目した。 まず、量刑段階においては、わが国でも刑事訴訟法の一部改正によって既に導入されている「被害者の意見陳述」が特に問題となる。実体法的観点からは、被害者が陳述した意見(英米におけるVISに相当)をどのような量刑事情として位置づけるかが、また手続法観点からは、被害者の刑事手続関与を当事者主義といかに調和させるかが重要となる。結論的には、被害者の意見陳述を「権利」として構成することは後者との関係で難点が多く被害者にとってマイナス面もあること、前者との関係でも量刑を不安定化する要因があることが明らかになった。次に行刑段階においては、アメリカで実施されているような受刑者の仮釈放に際しての被害者の意見表明が問題となるが、これについても現在の更生保護制度の構造に沿わない面が多いことが判明した。 以上のように、従来の制度を維持したままで「回復的司法」モデルをわが国に導入することは却って被害者支援に結びつかない面があり、(その是非は別にしても)完全なパラダイム転換を前提としなければ同モデルの本来の有効性が発揮できないことが重要な知見として得られた。
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