2001 Fiscal Year Annual Research Report
電子機器を利用した環境犯罪学的技法ないし状況的犯罪予防の展開
Project/Area Number |
12620071
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Research Institution | TAKUSHOKU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
守山 正 拓殖大学, 政経学部, 教授 (90191056)
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Keywords | 環境犯罪学 / 状況的犯罪予防 / 監視カメラ(CCTV) / 転移 |
Research Abstract |
昨年の引き続き、欧米諸国の中でもイギリスの公共空間におけるCCTV(Closed Circuit Television 閉鎖回路式監視カメラ)の設置状況について、現地調査を行った。これについては、シェフィールド市役所の協力を受け、市街地を中心にCCTVの設置状況及びCCTV管理センターを視察し、担当者に対するインタービューを行った。また、関係機関、ケンブリッジ大学犯罪学研究所アンソニー・ボトムズ教授、シェフィールド大学法学部ジェイムズ・ディグナン博士、さらには内務省調査統計課モリッツ・フロッケンハウス氏などのCCTV専門家から意見を聴取した。なお、ケンブリッジ大学犯罪学研究所ラジノビッツ図書館において資料を収集した。 この結果、CCTV設置によって概ね以下の機能が確認された。(1)犯罪予防効果、つまりCCTVの設置により潜在的犯行者が検挙のリスクを認識し、当該場所では犯行を控えること。現に、設置場所付近では犯罪減少がみられた。(2)犯行捕捉機能、つまり犯行の状況を詳細に把握できるため警察官の配備等、迅速で的確な警察活動の対応が可能なこと。これにより検挙率が高まり、犯人検挙の効果がみられた。(3)犯罪証拠記録機能、つまりCCTVは一般にビデオ装置も兼ねており、その結果、犯罪証拠を記録でき、警察、検察、裁判場面で犯行者の追及に効果的である。これにより、犯行者が犯行を認める傾向が強まり、これらの機関の人的資源と時間の節減に効果がみられた。 一般に、CCTV等の防犯機器の設置は、犯罪を他の場所に移転させてしまう転移現象(displacement)がみられるが、逆に、CCTVを設置することにより予防効果の他の地区への波及効果もみられた。つまり、CCTV設置箇所に隣接する地区ではCCTVを設置しないにもかかわらず、犯罪減少がみれたのである。このように、公共空間におけるCCTV設置は状況的犯罪予防手段として一定の効果を有することが認められたが、他方で、市民生活を無差別に捕捉し、プライバシーの侵害を招く危険は依然指摘されている。しかし、それ以上に市民が安心して街路を利用できる点で、概ね市民から歓迎されており、この点は、わが国やアメリカとは異なった状況にあるものと思われる。
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[Publications] 守山 正: "環境犯罪学とは何か"PSCIKO. 2002年3月号. 1-8 (2002)
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[Publications] 守山 正: "環境犯罪学の論理と倫理"西村春夫先生古希記念論文集. (2002)
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[Publications] 守山 正, 渡邉泰洋: "「ひったくり」等路上犯罪に対する犯罪不安及び環境設計による犯罪予防"季刊 社会安全. 43号. 10-19 (2001)