2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12620073
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Research Institution | DOSHISHA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
瀬川 晃 同志社大学, 法学部, 教授 (00104604)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川本 哲郎 京都学園大学, 法学部, 教授 (60224862)
奥村 正雄 同志社女子大学, 現代社会学部, 教授 (30265532)
川崎 友巳 同志社大学, 法学部, 専任講師 (80309070)
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Keywords | 金融犯罪 / 経済犯罪 |
Research Abstract |
前年度からの研究を継続して実施し,金融・経済犯罪の実体分析と原因の究明,原稿の金融・経済犯罪対策の問題点の検討,犯罪予防に向けた企業の自主的取り組みの実態調査と調査結果の分析,金融・経済犯罪対策の比較法的検討を行ってきた。ただし,金融、経済犯罪をめぐる動向は,めまぐるしい面があり,わが国を例にとっても,本年だけで,銀行の不正融資事件、自動車メーカーによる「リコール隠し」事件,生鮮食品卸売業者等による産地偽装詐欺事件など、社会の耳目を集める事件が相次ぎ,その法的対応はなお決着を見ていない。また、アメリカ合衆国では,「エンロン事件」を契機に,金融犯罪や経済犯罪への取締りを一層強化する動きも見られるが,その動向も、なお着地点が不明の状況にある.こうした状況を踏まえた場合,今後も引き続き金融、経済犯罪について新しい動向を踏まえた研究を継続するとともに,研究に一応の決着をつけるために,その対象を限定する必要があるとの認識にいたった。そこで本年度は,バブル経済の処理という本研究の当初の問題意識にとって欠くことのできない金融機関による不正融資の刑法上の対応について、優先的に検討を加えた。その結果として,次のような結論に至った。わが国の背任罪(特別背任罪)による対処は,なお不十分であり,立法的な措置を講じる前に,解釈論のレヴェルにおいて,経済活動の実態に沿って、適正に経営者の刑事責任を問うための検討が可能である。とくに、主観的構成要件要素である「図利加害目的」の解釈については,学説上、判例の検討が不十分な面があり,こうした点を深く掘り下げることによって,基本的に、金融機関のためのみに行われた融資以外については,たとえ金融機関の利益も考慮していた場合であっても、背任罪の成立を認める解釈論がありうるのではないか。こうした解釈にとって,わが国の住専問題と類似した乱脈融資の処理として,金融機関の経営者4000人の刑事責任を問うたアメリカ合衆国の動向が大いに参考になるという点でも,共通の認識を得た。
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