2001 Fiscal Year Annual Research Report
「対抗文明」としての「大東亜共栄圏」の政治経済学的・外交史的研究
Project/Area Number |
12620074
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松浦 正孝 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (20222292)
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Keywords | 大東亜共栄圏 / アジア主義 / 汎アジア主義 |
Research Abstract |
本研究の第2年度である13年度においては、主に二つの作業を予定していた。英国で収集した公文書館等の史料整理を進めることと、英国側の情報を通じて浮き上がってくる問題についての日本側の実態が如何なるものであるかについての材料収集及びその解析である。 前者については、ほとんど進まなかったというのが実情である。 一方後者については、外交史料館所蔵の資料を中心にかなりインテンシブな材料集めとその検討が出来、重要な論点も明らかになってきた。東北大学に所蔵されていた「汎アジア主義」に関する史料収集も進めることが出来た。アジア通商に関する何人かの重要な政治経済的人物のご遺族からは、興味深い聞き取りを行い、貴重な資料の閲覧も許された。また、刊行準備を進めていた単著『財界の政治経済史』の原稿が13年秋に一応完成したが、当初その中の一章として予定していた、「汎アジア主義」の背景としての東アジア通商システムの再編成についての章は、書き上げてみたものの、本全体の構成から浮くように思われたために、結局その簡単な要旨だけを残しただけで、削ってしまった。しかしこれらの作業を通じて得られた自分なりのテーゼを、14年発行予定の京都大学『史林』に、秋田茂・籠谷直人編『1930年代のアジア国際秩序』(渓水社、2001年)に関する比較的長い書評論文として掲載することとなった。 以上の作業を通じて明らかになったのは、「汎アジア主義」の形成において通商問題や経済的ネットワーク、特に台湾商人・インド商人等の日英両帝国の担い手が重要な役割を果たしたこと、しかし経済的実態と政治的認識とは直接結びつくのではないので両者の関係をきちんと解明することが必要であることであった。
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Research Products
(2 results)