2002 Fiscal Year Annual Research Report
「対抗文明」としての「大東亜共栄圏」の政治経済学的・外交史的研究
Project/Area Number |
12620074
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松浦 正孝 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (20222292)
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Keywords | 大東亜共栄圏 / アジア主義 / 汎アジア主義 |
Research Abstract |
本研究の第3年度にあたる14年度は、昨年度執筆した、秋田茂・籠谷直人編『1930年代のアジア国際秩序』(渓水社)についての書評論文(『史林』85巻3号、2002年5月)に記した大まかな見取り図に従って、研究の各章にあたる個々の論文の執筆及びその準備を進めている。その中で、「大東亜戦争」への過程を満州事変以後の「汎アジア主義」成長の過程と捉え、特に台湾要因及びインド要因に注目しながら、日英間の政治経済圏争奪が「大東亜共栄圏」形成へと向かう動きを政治経済的に描くという方向性が、少しずつ明確になり始めた。14年度に行った作業は、以下の通りである。 まず第一に、14年10月に刊行した単著『財界の政治経済史』第五章第一節において、満州事変以降の日本が「大東亜戦争」へと傾斜していく流れを「汎アジア主義」化の過程として捉える観点を提示し、続く第二節・第三節でこの観点に基づいて財界の外交との関わりを対英関係、対中関係に分けて分析した。実は当初の草稿では、この章で本格的に「汎アジア主義」化の過程について詳述する予定であったが、この著書全体のバランスの問題と、本研究自体が未だ熟していないという判断とから、禁欲し、ほんのさわりだけを記述するに止めた。 第二に、インド要因に関する通史的論文の執筆を進め、英国側資料を整理しながら、日本側での動きを通商摩擦・経済交流や仏教ルート・軍部の動き等を中心にトレースする作業を進めた。15年夏に脱稿し、来年度刊行予定の共著に掲載する予定である。 第三に、台湾要因に関する論文収集のための材料を集めた。現在も英国側資料の分析と収集を行いつつ、日本側資料の収集・整理を進めている。本年度の研究活動の中で得たモンゴル・ドイツ等の研究者や京大関係者との情報交換が、非常に有益であった。
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Research Products
(2 results)