2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12620085
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
清水 靖久 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 教授 (00170986)
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Keywords | 20世紀初頭日本 / 帝国主義論 / 日露戦争 / 社会的キリスト教 / 木下尚江 / ジョージ・D・ヘロン |
Research Abstract |
本研究は、20世紀初頭日本の帝国主義論について考察してきた。当時の日本で帝国主義を主張した人々はどのような論拠を示し、どのような工夫をしたか、帝国主義を批判した人々は何を根拠としたか、そこに国際社会をめぐるどのような見解の対立があり、どの点では見解が共有されていたかに注目しながら、当時の主要な思想家の著作、新聞雑誌の記事などを閲覧し、調査を進めてきた。これまでの調査では、東京や大阪の図書館に所蔵されている明治期の新聞雑誌の閲覧とともに、最近刊行された明治期の『読売新聞』や雑誌『太陽』のCD版による網羅的な検索が大いに役に立った。 これまでの研究で明らかにしてきたのは、帝国主義という言葉が日本で初めて用いられたのは1898年であり、日清戦争による日本の台湾領有とともに、米西戦争をめぐる米国の帝国主義論争が影響していたこと、1904年の日露戦争に至る過程のなかで、日本の膨脹を主張する論者といえども、ロシアの帝国主義を非難する関係上、またロシア以外の欧米諸国から警戒されないためにも、必ずしもためらいなく帝国主義を主張できなかったことなどである。 20世紀初頭日本の帝国主義論においては、1898年の米西戦争から1900年の大統領選挙に至る米国の帝国主義論争が強く意識されていた。その米国で帝国主義を批判した社会的キリスト教の思想家ジョージ・D・ヘロンに注目し、村井知至や木下尚江に対するその影響を研究した成果の一部を論文「社会的キリスト教と木下尚江」として発表した。今後もヘロンを初めとする米国の帝国主義批判者の思想的影響に注目しながら、日本の帝国主義批判の思想についてさらに研究を進めていきたい。
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Research Products
(1 results)