2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12620085
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
清水 靖久 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 教授 (00170986)
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Keywords | 20世紀初頭日本 / 帝国主義論 / 日露戦争 / 平民社 / 木下尚江 / トルストイ |
Research Abstract |
本研究は、20世紀初頭日本の帝国主義論について考察してきた。当時の日本で帝国主義を主張した人々はどのような論拠を示し、どのような工夫をしたか、帝国主義を批判した人々は何を根拠としたか、そこに国際社会をめぐるどのような見解の対立があり、どの点では見解が共有されていたかに注目しながら、当時の主要な思想家の著作、新聞雑誌の記事などを閲覧し、調査を進めてきた。 本年度の研究では、帝国主義の主張者の思想はすでにかなり明らかにしたので、帝国主義の批判者の思想を明らかにすることに力を注いだ。20世紀初頭の帝国主義批判が1904-5年の日露戦争に対する非戦論へ展開した経緯について、論文「日露戦争と非戦論」で検討した。日露戦争においては、第一にキリスト教、第二に自由主義、第三に社会主義の見地から、戦争と膨脹に反対する思想が表明された。しかし帝国主義批判が戦争反対と結びついたわけでは必ずしもなく、露国の帝国主義を防ぐために戦争に賛成する論理がかなり強かったことを明らかにした。 日露戦争に対する非戦論においては、キリスト教のなかでもトルストイの思想の影響がきわめて大きかった。幸徳秋水ら平民社の人々も、社会主義の相対的な非戦論だけでは戦争反対の運動を維持できなかったので、トルストイを否定することはついになかった。内村鑑三や安部磯雄のようなキリスト教徒は、トルストイに敬服しながらも、愛国心とは衝突しない形で非戦論を唱えた。それに対して木下尚江は、トルストイ的な絶対非戦論と社会主義的な戦争批判を結びつけ、日露戦争後も非戦論を保った。そのことを図書『野生の信徒木下尚江』にまとめた。
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Research Products
(2 results)