2001 Fiscal Year Annual Research Report
「冷戦の終焉」と米国の移民・移民政策--その歴史的分析--
Project/Area Number |
12620092
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Research Institution | College of International Relations Nihon University |
Principal Investigator |
加藤 洋子 日本大学, 国際関係学部, 教授 (00182345)
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Keywords | 移民 / 米国 / 冷戦 / 戦略 / 東アジア / 情報技術革命 / 資本主義 / 国民国家 |
Research Abstract |
平成13年度は、文献の収集につとめると同時に、日本における米国移民史研究のあり方を検討し、研究会で「移民史研究のフロンティア」と題して報告した。また、ブッシュ政権の移民政策や、平成13年9月のテロ攻撃が米国の移民史上に与える影響について分析を進めた。 ブッシュ政権は、合法移民については帰化申請プロセスや家族統合の迅速化を求め、不法移民については取り締まり強化をめざした。しかし、1990年代の米国経済の活況は、外国からの人の流入を促進させ、移民に対する米国人の反発は米国社会の底流にくすぶっている。こうしたなかで9月のテロ攻撃があり、移民規制論が声高に語られるようになってきた。 しかしながら、テロ攻撃と移民規制論がもたらす問題点は、新しく生じたものではない。米国の輸出規制は移民規制と連動することが多いが、「冷戦の終焉」以前には、共産圏は「国家安全保障上の統制」に分類され、1980年代以降にはイラク、イラン、アフガニスタンといった国々やテロ対策は「外交政策上の統制」に分類されたものの、どちらにも輸出規制が実施されてきた。 テロ対策は「冷戦の終焉」以前からのものであるが、テロ攻撃に伴う移民規制強化がもたらす問題も「冷戦の終焉」以前からの連続性を示している。例えば、米国の国防省は、外国人が高度技術に関わらないよう規制を強化しようとしているが、米国ではハイテク関連に海外の技術者が多く、移民政策も高度技術者の米国への流入を促進させてきたから、規制強化が実施されれば困難な状況が生じることが懸念されている。国家安全保障とグローバル化が進む経済と人の移動の問題は、9月のテロ攻撃に象徴的にあらわれているが、「冷戦の終焉」以前から持続する問題でもある。 締め切りのある仕事が他にあったことや活字化が遅れていることもあって研究成果がまだ出版されていないが、今後一年以内に成果を出す予定である。
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