2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12620097
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
飯島 昇藏 早稲田大学, 政治経済学部, 教授 (80130863)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川岸 令和 早稲田大学, 政治経済学部, 助教授 (10224742)
眞柄 秀子 筑波大学, 社会科学系, 助教授 (50219292)
井戸 正伸 茨城大学, 人文学部, 教授 (00232497)
谷澤 正嗣 早稲田大学, 政治経済学部, 助手 (20267454)
田中 智彦 東京医科歯科大学, 教養部, 助教授 (30288039)
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Keywords | 高齢化時代 / 小さな政府 / 福祉改革 / 生命倫理 / 配分的正義 / 福祉への権利 / 新制度論的アプローチ / 先進各国間の比較政治学 |
Research Abstract |
高齢化時代における福祉医療政策が、予算制約の中で占める位置を、政治理論および生命倫理学の知見を援用しつつ検討することが本研究の目的である。高度成長が終焉した一九七〇年代末から八〇年代にかけて、先進各国の政府は、福祉カットを含む不人気な医療政策を提案し、遂行せざるをえなくなっている。他方で、限られた医療資源をいかに配分すべきかという配分的正義の問題は、高齢化時代においては「病」のみならず「老い」の視点も組み込んだ、原理的な検討を必要とする。本研究は、既存の制度や構造、政党の争点連合の影響のもとで、有権者からの反発を最小限に食い止めつつ、公正な仕方で医療制度改革を遂行することの困難性と可能性を分析するための、理論的な枠組を提案する。さらにイギリス、イタリア、アメリカ合衆国、日本という四つのケースを、政策遂行においてみられるアクター間のインタープレイに着目しつつ比較検討する。 本年度は、各参加者が理論面での研究を進めると同時に、2000年12月に発展途上国での経験が豊富な予防医学の専門家を招いて講演会を行ない、予防医学・基礎医学の見地から、また発展途上国と先進国の比較の見地から、高齢化時代の医療政策の取るべき方向について知見を得た。また2001年1月には憲法学の専門家3名を招いて研究会を開き、先進国にとりわけ顕著な「価値観の多様化」という条件のもとで、自由・平等・権利といった近代立憲主義的な理念にもとづいて高齢者医療を含む福祉政策一般を追求する際の問題点について、フランス、アメリカ、日本、フィンランドでの最新の研究成果を踏まえた、比較憲法学的考察を行なった。これらの活動をもとに各参加者は、海外から比較政治学の専門家複数名を招いて7月に開催される研究会で報告される、福祉政策の道徳的根拠、福祉と権利、医療と生命倫理、日本の福祉改革などのテーマに沿った英文論文を準備中である。
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