2001 Fiscal Year Annual Research Report
国境・領土紛争の比較研究-ロシアとウクライナ、中国、日本-
Project/Area Number |
12620105
|
Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
木村 汎 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (80001767)
|
Keywords | ロシア / ウクライナ / 中国 / 日ロ / 国境 / 国境画定 / 領土紛争 / カリーニングラード |
Research Abstract |
当学年度は主として、ロシアによるウクライナへのクリミア半島の正式割譲についての研究を行った。1997年5月1日、エリツィン・ロシア大統領は、クチマ・ウクライナにクリミア共和国の割譲に同意した。このような大英断を、同大統領はなぜ行ったのか?ロシアの安全保障の観点から、そのような決定を下さねばならぬ、次のような「政策上の緊迫性」があったからである。端的にいえば、ウクライナの・NATO加盟を牽制する必要性である。 地政学上の要衝の地であるウクライナが将来万一NATOに加盟することとなれば、ロシアはウクライナという緩衝地帯(buffer zone)を喪い、NATO加盟諸国と直接地続きで接しなければならない羽目となる。ロシアとしてはそのような可能性を防止せねばならない。そのようなロシアの弱味を見越して、ウクライナはNATO加盟問題にたいする己の立場を暖味なものとする。ロシアは、そのようなキエフの戦術を承知しつつも、ウクライナにアメの提供を余儀なくされた。 今年度は次いで、カリーニングラードについての研究も行った。カリーニングラード地方は、かってのドイツ領(ケーニスベルグ)。第二次大戦後のドイツは、ロシアに返還要求を断念している。カリーニングラードは、2002〜4年に隣国のリトアニアやポーランドがEUやNATOに加盟すると完全な陸の孤島と化する。そのために、ロシア政権は同地域を「自由経済特区」に指定している。これは、ロシア政府が北方四島について提案している「経済共同開発」と類似の構想である。しかし、そのための法整備などが不備のために、隣接諸国との経済格差は埋まらず、頭痛の種となっている。 ウクライナ、カリーニングラードの問題と、日ロ間の北方領土問題との類似点と相違点がかなりの程度明らかとなった。これが、今年度の成果である。
|
-
[Publications] KIMURA, Hiroshi: "Putin's Policy toward Japan"Demokratizatisia. 9. 276-291 (2001)
-
[Publications] KIMURA, Hiroshi: "Putin's Policy : Russia, Japan, and the Northern Island"Gaiko Forum (Japanese Perspective on Foreign Affairs). 1. 27-33 (2001)
-
[Publications] 木村 汎: "カリーニングラードと北方領土-相違点と類似点"日本研究(国際日本文化研究センター). 24. 13-35 (2002)
-
[Publications] 木村 汎: "遠い隣国"世界思想社. (2002)