2001 Fiscal Year Annual Research Report
国内労働移動と郷鎮企業の行動からみた中国経済発展の理論的分析
Project/Area Number |
12630007
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
多和田 眞 名古屋大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (10137028)
|
Keywords | 中国国内の労働移動 / 郷鎮企業 / コーポレートガバナンス / 労働者管理企業 / ルイスモデル / ハリス・トダロモデル / 中国の経済発展 / 最適生産水準の決定 |
Research Abstract |
過去、労働者管理企業および国際労働移動の理論的分析について研究を行ってきており,その研究蓄積をもとに中国の経済発展について、中国の経済的特徴を考慮したモデルを構築して、分析したものである。 中国の国内労働移動は西部地域から東部地域への大量の労働移動と農村地域から周辺の郷鎮企業への労働移動が存在する。前者は大都市におけるインフォーマルセクターの形成によって、ハリス・トダロ的条件を、後者は郷鎮企業の近代部門としての役割から、ルイス的条件をみたしていることを論証した。そして、郷鎮企業についてのコーポレトガバナンスに着目して、株式の状況や企業経営を概観することにより、郷鎮企業が労働者管理型の企業形態の特徴を備えていることを論じた。こうした点を踏まえて、経済発展におけるルイスモデルにおいて、その近代部門が労働者管理型企業であるとして、経済発展のための政策について分析を行った。 いくつかの結果を得たが、通常のルイスモデルで主張される近代部門の育成政策は無効であり、ハリストダロモデルが主張する伝統部門の技術向上が有効であることが示された。さらに、この分析からのインプリケーションとして、郷鎮企業が資本主義的な利潤最大化行動をめざすような政策、例えば株式市場や資本市場の健全な育成が重要であることが引き出された。 この研究の今後の発展として、ハリス・トダロ的側面と国営企業の存在を考慮した場合の分析を行うことで、分析の精緻化をはかることが考えられる。
|
-
[Publications] 多和田眞, 李暁春: "中国国内労働移動の二面性"近藤・多和田・松葉編「労働者管理企業と労働移動の経済学」. (勁草書房). 88-106 (2002)
-
[Publications] 李暁春, 多和田眞: "中国郷鎮企業のコーポレートガバナンスの構造"近藤・多和田・松葉編「労働者管理企業と労働移動の経済学」. (勁草書房). 40-52 (2002)
-
[Publications] 多和田眞, 李暁春: "企業のメンバーが固定的な場合の労働者管理企業の経済分析"近藤・多和田・松葉編「労働者管理企業と労働移動の経済学」. (勁草書房). 3-19 (2002)