2001 Fiscal Year Annual Research Report
古典派経済学における富裕と人口-知的史的アプローチ-
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12630013
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
深貝 保則 東京都立大学, 経済学部, 教授 (00165242)
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Keywords | 富裕 / 人口 / 救貧 / マンデヴィル / マルサス / ベンサム / タウンゼンド |
Research Abstract |
18世紀初頭のイングランドにあって、文筆で高名な二人の人物が救貧法を批判する論陣を張った。デフォーは高賃金の経済論、マンデヴィルは低賃金の経済論に依拠していた点で好対照であったが、そこで論じられたのは、怠惰な人間をどう処遇するのかという意味で人間観と固く結びついた社会的な問題であった。 マンデヴィルはまた、奢侈に向けての虚栄心が産業を活発にすると論じた。この側面は、張り合い(emulation)に着目して奢侈とインダストリーの螺旋的展開を描くヒュームや、「見えない手」の導きにより私的利益追求が社会的富裕をもたらすとするスミスらに引き継がれた。 スミス的な発展的社会における富裕増進論のなかで救貧問題は一旦後景に退いたが、イングランド、スコットランドにあって貧民の社会的コストというトピックスが再浮上するのは、タウンゼンドの『救貧法論』(1786)を嚆矢として、1790年代における飢餓の問題の顕在化という状況のもとにおいてである。幾何級数的な人口増加傾向に対して算術級数的な食糧増産しか可能でないという象徴的な議論で貧困の原因を説き起こすマルサス『人口論』(1798)によって、貧困問題というテーマは19世紀前半に至る経済的言説のメイン・トピックスの一つにせり上がっていく。 このなかでベンサムもまた、富裕、人口、救貧の問題を論じた。ベンサムはまず『高利の擁護』(1787)において、革新的な役割を果たす冒険的な企業者(projector)に経済発展のダイナミズムの原動力を見出した。1795年前後からの飢餓の深刻化と救貧問題の浮上という問題状況のなかで、ベンサムは刑務所改革の構想を応用して、救貧パノプティコンというアイデアを打ち出した。そして『真の警鐘』(1801)において、労働の充用を効率レヴェルで捉える議論が登場し、『経済学綱要』(1801-1804執筆)でもこの議論は維持された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 深貝 保則: "怠惰な貧民・機会なき貧民・目覚めに誘われる貧民-イギリス経済思想の教育論との接点に向けて-"『日英教育研究フォーラム』(5). 7-18 (2001)
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[Publications] 深貝 保則: "功利主義的統治と経済的自由主義-ベンサムとJ.S.ミル-"高哲男編『自由と秩序の経済思想史』名古屋大学出版会. (2002)
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[Publications] Yasunori Fukagai: "Benthan and Malthus on Wealth and Population"Paper presented at the History of Economics Society Conference, Wake Forest University, Winston-Srlem. 24 (2001)
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[Publications] Yasunori Fukagai: "Joseph Tounsend and Jeremy Bentham on Wealth, Population and Pauperism"Paper presented at the History of Economic Thought Conference, Manchester Metropolitan University. 32 (2001)
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[Publications] Yasunori Fukagai: "Jeremy Bentham on production of wealth and population mechanism"Paper presented at the Colloguium on the Economic Thought of Jeremy Bentham, Tokyo Metropolitan University. 26 (2002)
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[Publications] Yasunori Fukagai: "Typology of the Active Humanity in the Economic Thought : Economic Man and (or vs:) Entrepreneurship"The Entrepreneurship in the History of Economic Thought Seminar, Tokyo Metropolitan University. (2002)