2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12630018
|
Research Institution | Takushoku University |
Principal Investigator |
吉野 文雄 拓殖大学, 海外事情研究所, 教授 (90220706)
|
Keywords | 経済成長 / 財政部門 |
Research Abstract |
東南アジア諸国は、1997年以降経済危機に見舞われ、現在ではすでに回復軌道に乗っているものの経済成長は打撃を受け、財政もその回復のため赤字化し、政府債務をふやすことになった。これまでの研究では、経済危機にいたる期間の財政の動向と経済成長とのかかわりが分析されたが、経済危機に財政部門がどのように対処したかについては、裏面にあげた論文にまとめた。これは、インドネシア、マレーシア、タイの3カ国に限ったものであるが、他の各国にも共通した含意を得た。すなわち、為替レートの切り下げとそれとともに生じた不況(雇用の悪化)に対して財政支出を拡大したが、そのタイミングが最も重要であった。インドネシアはそれを失したために、金融危機はマクロ経済全般の危機に拡大し、最終的には政治不安を導いた。 また、きわめて特徴的なことは、この経済危機といわれた期間にソーシャルセーフティネットという考え方が定着し、東南アジア諸国に「福祉国家」という考え方が根付いたことである。言うまでもなく「福祉国家」という考え方は、所得水準が上がった先進国に芽生えたわけだが、東南アジア諸国では社会的弱者を救済する必要から、政府に期待される役割が変わってきたのである。いっぽうで、インフラストラクチャーの整備などの公共財の供給については不充分なままにとどまっている。この変化は、これら諸国の将来の成長に暗雲を投げかけるものである。 幸いなことに、経済危機の痛手をこうむった諸国は、それほど大きな政府債務に苦しめられているわけではないことである。また、経済危機によって生じた債務は多くが民間のものでもある。ラオス、ミャンマー、カンボジアなどの債務を負った国々は、通貨下落も軽微にすんだのである。
|