2000 Fiscal Year Annual Research Report
世界的規模での所得分布変動と各国所得分布の相対的位置の変遷に関する統計的分析
Project/Area Number |
12630032
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
吉田 建夫 岡山大学, 経済学部, 教授 (00150889)
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Keywords | 所得分布 / ローレンツ曲線 / 不平等度 / 世界的所得分配 / 集中度曲線 / RAI指数 / ジニ係数 |
Research Abstract |
本研究の目的は世界各国から得られる国民所得・人口・国内所得分布表を用いて世界全体を対象とした大きな所得分布表(以下,世界的所得分配と呼ぶ)を推計し不平等度の推移を計測することである。世界的所得分配の不平等度は国家間の所得不平等と国内所得不平等の加重和とに分解して考察することができる。 1.国民所得と人口データを用いて計測される世界的分配における国家間の所得不平等の推移は1990年代には縮小傾向にあるが、この低下傾向の大部分は中国の急速な経済成長によって説明可能であるようである。中国を含む世界160ヵ国を対象として計測した国家間所得不平等度を示すジニ係数値は1990年には0.580であったが、1994年には0.559に、1998年には0.546へと徐々に低下傾向を示している。しかしながら、中国を除いて再計測したジニ係数値は1990年94年共に0.563、1998年は0.565とほぼ不変に推移している。なお、各国の国民所得は購買力平価により共通通貨のドル表示に換算した。 2.以上の計測では各国の国内所得分布が考慮されていない。国内所得分布を考慮に入れたより正確な世界的所得分配の推計のためには更に世界各国の国内分布データが必要とされる。近年世界銀行やILO、国際連合(国連大学)等の国際機関が公表した所得分布データベースは何れも1990年代初頭までのデータのコンパイルに留まっている。世界の多くの国々における最近10年の相対所得分布の変動傾向はこれまでの常識とは異なり決して安定的ではない。このため1990年代後半の最新所得分布情報の収集に努めており、研究計画に従って独自のデータベースの作成を行っている。 3.データの整備を進めるとともに、各国の所得分布を比較するための基礎的な計測手法の理論的考察を深めることが重要である。異なった状態にある所得分布の間で経済的厚生の比較を行うための新しい手法として、(通常の相対的不平等概念とは異なる)独自の中間主義的不平等概念とそれに基づく新しいローレンツ曲線基準の提唱を行うべく、両者の数学的同値性の証明を中心とした理論的考察を現在進めている。
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