2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12630040
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Research Institution | IBARAKI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
山本 博史 茨城大学, 人文学部, 教授 (40302319)
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Keywords | 途上国経済 / 産業政策 / 砂糖産業 / 輸出産業 / 投資政策 |
Research Abstract |
本研究では、以下のように実態調査および現地研究を行った。研究実績は次の通りである。 本年度は、2003年7月31日から9月9日、2004年3月28日から4月7日にかけて、タイ国内において現地調査研究を行った。調査機関は国立公文書館、工業相糖業局、タマサート大学、チュウラロンコーン大学、カセサート大学、農務省経済局などである。この調査とこれまでの研究から、現在タイ砂糖産業が主に国際糖価の下落に起因する砂糖基金の大幅な累積赤字から、あらめて危機的な状況下にあることが明らかとなった。政府は1982年以来維持してきたタイ式分糖法の抜本的な見直しを検討しているが、糖業関係者の利害が複雑に絡む問題であることから、2004年4月の時点では具体的な形となっていない。 この研究の目的は、政府が現在進めている1997年7月のアジア経済危機脱出にむけての農業関連産業奨励政策がどのように展開されるのかを、糖業を事例として明らかにすることであった。個別産業としては、糖業が債権リストラが産業横断的にとられた第一号であり、既に巨額の政府資金が貸し渋りによる工場や農民の運転資金の不足を補うため投入されている、ことが検証された。また、タイ砂糖産業の既存研究が十分におこなわれていないため、従来の論に反証を提出する側面よりも、基礎的なデータを提出し、発展途上国における産業政策の具体的な実証をおこなうことも研究の目的であった。タイ政府の糖業政策が、タイ糖業の輸出競争力の強化に対してどのような役割を果たしたかが、今回の研究で検証できたと考えている。特に制度的に砂糖産業を助成するシステムが糖業全体に対してなされてきたことが確認できた。重要な側面として、1980年代半ばの国際的に厳しい輸出市況を打開するため、国内糖の価格を固定化することによる補助機構を創設したことがあげられ、その結果タイ砂糖産業は、1990年代には輸出数量を増大させることができた。 また、当初研究の範疇ではなかったが、現在日本とタイとの自由貿易協定が検討され始め、その農業分野における交渉課題のひとつとして砂糖が大きな問題となっている。今回の研究において、自由貿易協定への資料として最近のタイ側の状況を説明することができたことは、幸いであった。
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