2001 Fiscal Year Annual Research Report
戦後国鉄における中間管理者層の形成と行動に関する研究:1945年〜1970年
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12630042
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
禹 宗うぉん 埼玉大学, 経済学部, 助教授 (50312913)
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Keywords | 国鉄 / 中間管理者 / 組織 / 人事 / 取引 |
Research Abstract |
本研究は、国鉄における中間管理者層がどのように形成され、どのような行動様式をとることになったのかを歴史内在的に解明しようとするものである。 この作業を行うに当たって本研究は、中間管理者層が経営組織の内部における自らの地位や役割を可能な限り高め、且つそれを維持するために、最高管理者層及び一般労働者層との間に、ある種の集団的な取引を行ない、そのなかから昇進慣行を始めとする独特な行動様式を形成してきた側面を重視する。そして、(1)縦割の系統構造、(2)キャリア組とノン・キャリア組との分業構造、(3)ノン・キャリア組のなかでの選抜構造が、そのような取引を可能とさせる背景要因であったという仮設に立つ。 国鉄は、多様な事業を含む鉄道業務を網羅的かつ体系的に組織・運営するために、比較的早い時期から総務、経理、運輸、保線、工作、建設などの縦割り別に多段階の組織を編成する系統別組織形態をとってきた。この系統は、キャリア組、ノン・キャリア組を問わず、他系統に対して自分の利害関係を主張・拡大するための折衝=取引の母体となると同時に、その結束力を維持・強化するためのキャリア組とノン・キャリア組との日常的な取引の場となる。 国鉄は、官僚化の進展のなかでキャリア組とノン・キャリア組とを区別し、互いの分担を明確にする組織構造を発展させてきた。キャリア組は全国幹部として主に政策にかかわる意志決定を担い、ノン・キャリア組は地方幹部として主にその政策の現業機関への展開とその具体的な執行を担当する。この分業構造は、キャリア組の数が非常に少ない側面と相俟って、ノン・キャリア組の発言力を一定程度以上に維持させる基盤となる。 国鉄は、最高管理者層になり得るキャリア組の数を制限することによって、キャリア組自身のポストを安定化するとともに、ノン・キャリア組の上層移動のチャンスを広げる政策をとってきた。そして、ノン・キャリア組のなかで更に少数のエリト層を比較的早期に選抜することによって、彼らに比較的に安定的な地位を保障するとともに、それから排除された多数のノン・エリトにも上層移動のチャンスを与える政策をとってきた。このような政策は中間管理者の内部階層を多様化し、それぞれの階層が一定程度の交渉力をもちながらも互いの牽制によって一定の枠以上にははみ出ないようにする効果があった。ある種の庇護移動とトーナメント移動を組み合わせたこの独特な選抜構造のなかからノン・キャリア組のエリト層を頂点とする中間管理者層の重層的な取引様式が形成されたのである。
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