2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12630064
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Research Institution | Hokkaido Information University |
Principal Investigator |
増田 辰良 北海道情報大学, 経営情報学部, 助教授 (70190361)
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Keywords | 創業 / 創業支援 / プル仮説 / プッシュ仮説 / 非線形仮説 |
Research Abstract |
開業をある産業への参入として定義するとき、次の3つがある。1.多角化、2.事業転換、3.新規創業。このうち、今年度は新規創業の決定要因を分析している海外の諸研究成果についてサーベイした。決定要因のうち、とりわけ「失業」と創業との間にある関係について注目した。なぜなら、この要因を解明することは、開業率の低下、失業の増加という我国の現在の経済状況から打破しうる政策含意を得ることができるからである。 「失業]と創業との間にある関係については、次の3つの仮説がある。1.プル仮説、2.プッシュ仮説、3.非線形仮説。このうち、プル仮説とは失業率の低い経済の成長期に創業が増えるということである。プッシュ仮説とは失業率の高い不況期に期待収益を求めて創業が増えるということである。非線形仮説とは、ある失業率までは創業も増えるが、限界点を超えると減るというものである。こうした仮説は一義的に決まるものではなく、対象とする国、産業、創業者の年齢、創業者の創業前の職業経歴、所有資産、税制などの制度に依存している。とりわけ、税制が創業に与える効果は我国の創業支援を分析・評価するときの有効な政策手段となる。分析方法は回帰分析が多用されている。その際、どの研究にも共通する説明変数は、創業先産業の収益性、産業成長率、経済全体の成長率、貸出利子率などである。従属変数は純創業率や粗創業率などが使われている。そして、研究成果を評価するときに注意しなければならないことは、従属変数である「創業」の定義の仕方によっても結果に違いが生じていることである。 また、こうしたサーベイを通じて、今後の研究方向として、純経済的要因や税制などの制度以外にシリコンヴァレーに代表されるような企業の集積度(ネットワーク外部性)が創業意欲に与える誘因も説明変数に加えて分析すべきことを解明した。
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