2001 Fiscal Year Annual Research Report
韓国公企業労務管理史研究-生活保障型処遇制度の生成と経済開発期における変容
Project/Area Number |
12630076
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
金 鎔基 小樽商科大学, 商学部, 教授 (90281873)
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Keywords | 韓国の雇用システム / 韓国の労務管理 / 年功的処遇制度 / 生活保障型処遇制度 / 雇用・労働の国際比較史 / 経済開発と労務管理 / 韓国の労働運動史 / 電力産業の労務管理 |
Research Abstract |
近年、雇用・労働に関する国際比較研究の進展により、長期雇用制度や年功的処遇制度を現代雇用システムの普遍的要素と受け止める認識が広がりつつある。またその原因を説明する理論としては、現在の所、熟練説、中でも企業特殊熟練を強調する説がもっとも有力のようにみえる。本研究ではそうした見解との対抗を意識し、現代の雇用システムが労働者に生活保障を提供しなければならないという歴史条件の産物として生成されてきたことを論じている。まず、高度成長期の韓国において、年功賃金制度と流動的労働市場が共存していたことから、企業特殊熟練説の不十分さを確認する。またその間の労使紛争を分析し企業内処遇制度の変貌を促した争点が労働側の生活保障型処遇制度要求にあることを明らかにした。通説とは異なり、生活保障型処遇制度のルーツは、経済開発期の遥か以前に遡る。本研究では、主に電力産業の事例研究を通じて、韓国雇用制度史の観点から日本の植民地期と現代韓国の間の連続と断絶を明らかにした。即ち生活保障型処遇制度は植民地期に主に日本人である職員層や役付工員層を対象にして形成されたが、1945年解放後は韓国の一部公企業において従業員全体を包摂する制度として再編された。それが韓国社会における「よいジョブ」「あるべき処遇制度」の規範となり、経済開発期、企業側の労務管理を制約していく。1953年の勤労基準法もその具体的表現の一つであった。本研究の成果は以下の通り。第一に、韓国労務史研究の空白期間である1945-60年の研究に実証的戦略拠点を確保した。第二に、それにより、経済開発期以降の労使関係、労働運動研究において、内需型公企業と輸出型民間部門という二類型論を取り入れられるようになった。第三に、内部労働市場形成における生活保障論の視点を浮き彫りにした。
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