2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12630088
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Research Institution | Meijigakuin University |
Principal Investigator |
大塩 武 明治学院大学, 経済学部, 教授 (00103630)
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Keywords | 昭和電工 / アルミニウム工業 / スカイアルミ / 石油化学 / 阿賀野川公害問題 / 安西正夫 / 鈴木治雄 |
Research Abstract |
平成12年度に引き続いて昭和電工の工場所在地の官公庁・公文書館て資料調査と探索をおこなった。福島県立図書館、福島県立公文書館の所蔵資料の探索をおこない、東長原(旧広田)工場が提出した官公庁提出資料収集のために福島県河東町役場で調査をおこなった。 昭和電工の企画室次長を歴任し、その後『昭和電工五十年史』・『アルミニウム五十年史』・『昭和電工石油化学二十五年史』等の編纂を担当された川上秀一氏から聞き取り調査を実施した。川上秀一氏からは自らが担当した昭和電工の技術導入の実際を、同氏作成の導入一覧表によりながら、詳細についてレクチャーを受けた。 この2年間の資料収集ならびに聞き取り調査の成果によりながら、今後の研究の方向性を示唆するはずの一定の仮説を以下のように得るに至った。 戦後の昭和電工の戦略的な意思決定で注目すべきは4点ある。まず、アルミをめぐるビジネスについて。カイザーと提携アルミに進出しようとしていた八幡製鉄所を取り込んでスカイ(昭和電工のS、カイザーのK、八幡のY)アルミを成立させ、同社の経営権を掌握したことである。次いで、アルミの構造的な不況業種化をいち早く察知していち早く撤退の意思決定をしたこと。また、不況期に大分石油化学コンビナートの第2期工事を敢行したこと。資金問題に悩んでいた昭和電工は不況期における資金調達の容易さに大いに助けられその後の石油化学事業の展開が楽になったこと。そして最後に、阿賀野川の公害問題において、裁判で争うことを避けて和解に応じる決定をしたこと。 以上4点はいずれも安西正夫、鈴木治雄時代の戦略的な意思決定である。両者は波乱に富んだ戦前の昭和電工のマネジメントを担当した経営者である。彼らのあとに注目すべき経営者が出てこない、あるいは注目すべきマネジメントがみられないということは、他の化学工業企業と比較したとき、昭和電工という企業に戦前以来の特殊な性格が看取できるのではないかという見透しを抱かざるをえない。このような観点から今後昭和電工の戦後のビジネスについて実証的に研究を深めたい。
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