2002 Fiscal Year Annual Research Report
移住者の企業家への成長と同郷集団(徳島県人の北海道移住と九州出漁)
Project/Area Number |
12630092
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
佐藤 正志 摂南大学, 経営情報学部, 教授 (50231345)
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Keywords | 北海道移住 / 九州出漁 / 移住 / 藍 / 企業家 / 徳島県 |
Research Abstract |
明治期の徳島県における人口移動(流出)において、その規模の大きさで注目されるのが北海道移住と九州出漁である。北海道移住は、明治・大正期を通じて約5万人もの徳島県人が移動しており、同県は西日本最大の送出県となった。明治30年代に旧藩主蜂須賀茂韶が創設した農場への「団体移住」にはじまり、30年代後半以降は藍作衰退を背景に、大量の窮乏農民が北海道に渡った。こうした移住者を勧誘・組織した農場経営者のなかから、阿部興人・滝本五郎兄弟に代表される企業家が誕生した。 他方、九州出漁は、同県南部の漁民達が、不漁を背景に明治20年代から「出稼」型の出漁を開始し、大正末期には底曳網漁業へと漁法を転換させ、東シナ海・黄海を漁場とする「以西底曳網漁業」の発展を主導した。昭和10年前後に、漁民及びその家族6千人が、長崎・福岡など九州各地の根拠地に分散・定着するが、その選択を規定したのが「同郷集団」であった。さらに、有力漁民は、「同郷集団」の有する規制力に基づく、いわゆる「阿波型」経営によって企業家へと発展を遂げた。 今回の研究から、徳島県からの北海道移住と九州出漁は、前者が農民、後者が漁民を中心的な主体とするものであったために移動・移住形態には大きな差異が存在したが、両者とも移動時とその後の定着過程において、同郷あるいは地縁的集団による強い団結力と規制力を有していた。さらに、移住者のなかから移住地で活躍する企業家を生んでおり、これら企業家間には強い同郷意識が存在し、協力関係が構築されていた。また、企業家は同郷の有力政治家を介した人的ネットワークを有効に活用することが可能となっており、それによって、ビジネスチャンスを獲得・拡大していった点が明らかにできた。
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