2000 Fiscal Year Annual Research Report
公的部門の貸借対照表の機能とガバナンスに関する理論的・実証的研究
Project/Area Number |
12630151
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Research Institution | National Institution for Academic Degrees |
Principal Investigator |
山本 清 国立学校財務センター, 研究部, 教授 (60240090)
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Keywords | 貸借対照表 / 政府 / 会計 / 財政 / 資産 / 負債 / 純資産 / 公的年金 |
Research Abstract |
今年度は、米国と英国の国の貸借対照表と政府経営の関係について検討した。得られた知見は、下記のとおりである。 1.資産の計上基準のうち、政府会計に固有なインフラ資産、国防資産及び遺産についてみると、インフラ資産については両国とも資産計上されるが、英国が再調達価額で評価するのに対し、米国では取得原価で評価される。また、米国では国防資産を受託資産という概念に含め、貸借対照表の資産に計上せず、取得時に費用化されるが、英国では一部の国防資産は貸借対照表に計上される。一方、遺産については、米国では受託資産として物量単位で評価され貸借対照表に計上されないが、英国では原則として運営に使用されている場合には、更新価格または回復可能価格のいずれか低い価額で評価され資産計上される。 2.負債のうち、政府に特有な公的年金及び公務員年金については、両国とも公的年金の給付債務や積立不足額を負債とみなさず、貸借対照表の脚注情報に留めている。一方、公務員年金については企業の退職給付会計とほぼ同じ方法で給付債務を算定している。これは、額の推計を合理的に行えないため負債に該当しないと公式見解で述べられるが、負債の額が政治的に大きな影響を与えることを考慮した結果とみなすのが相当である。 3.財政政策との関係については、米国では貸借対照表に計上される資産・負債が限定されるため、財政政策に貸借対照表の純資産を活用する動きはなく、むしろ世代会計を利用している。一方、英国では、純資産を財政の持続可能性の評価尺度にしたり、経常的経費への借入金充当を禁止する黄金律の遵守状況の監視に使用している。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 山本清: "政府の財務制度の改革-国の貸借対照表(試案)に関連して-"会計と監査. 52巻・2号. 20-25 (2001)
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[Publications] Yamamoto Kiyoshi: "Budgeting, Accounting and Evaluation for Semi-Autonomous Public Organizations : The Case of Japanese Central Government"Proceedings of International Conference on Accounting, Auditing and Management in Public Sector Re forms. 659-667 (2000)
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[Publications] 宮川公男: "公的部門の開かれたガバナンスマネズメントに関する研究"総合研究開発機構. 188 (2000)