2002 Fiscal Year Annual Research Report
双対ヒッグス理論に基く量子色力学のトポロジーとカラーの閉じ込めの研究
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12640274
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
菅沼 秀夫 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (10291452)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土岐 博 大阪大学, 核物理研究センター, 教授 (70163962)
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Keywords | 量子色力学(QCD) / 閉じ込め / 格子QCD / フラックス・チューブ描像 / 非摂動論的真空 / 非閉じ込め相転移 / グルーボール / バリオン |
Research Abstract |
強い相互作用の基礎理論である量子色力学(QCD)においては、低エネルギー領域での強結合性を反映して、真空の構造自身が変容してしまい、多様で興味深い非摂動論的な現象を示す。カラーの閉じ込めは、そういった非摂動論的現象の最も顕著なものであり、その理論的解明は、素粒子物理学に残された重要課題の1つである。本研究課題では、「双対超伝導理論」(超伝導理論の電場と磁場を入れ換えた理論)に着目し、閉じ込め機構の解明とそれに関連する研究を行ってきた。方法としては、強い相互作用の第一原理計算である、格子QCD大規模数値シミュレーションを、スーパー・コンピュータを用いて実行し、以下の事実を明らかにした。 1.最大可換(MA)ゲージのQCDにおいては、グルーオンの非対角成分が1GeV程度の大きな有効質量を獲得し、非アーベル理論のアーベル化が起こる。 2.MAゲージのQCDでは、双対グルーオンが有効質量を獲得し、双対マイスナー効果が生じる。これらを通じて、MAゲージでのQCDが、長領域では、可換ゲージ理論とみなす事ができ、双対ヒッグス機構を通じて、カラー電束の1次元化及びカラーの閉じ込めが起こることを示した。 次いで、閉じ込めと密接に関連する、カラー電束の1次元化が、核子などのバリオンにおいても、成り立っている証拠として、3クォーク・ポテンシャルを格子QCD計算で精密に計算し、それが、近距離領域での1グルーオン交換の寄与と長距離領域でのカラー電束の寄与の和で表わされることを示した。 また、双対ヒッグス理論が予言するモノポールは、スカラー・グルーボールとして現れ、その性質はQCD相転移において特徴的に変化すると予想される。本研究では、格子QCD計算で、有限温度でのグルーボールの性質を研究し、QCDの非閉じ込め相転移の近傍で、その性質が大きく変化することを示し、その実験的な検証性についての提言も行った。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 高橋徹, 菅沼秀夫, 根本幸雄, 松古栄夫: "Detailed Analysis of the Three Quark Potential in SU(3) Lattice QCD"Physical Review D. 65. 114509(19) (2002)
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[Publications] 石井理修, 菅沼秀夫, 松古栄夫: "Glueball Properties at Finite Temperature in SU(3) Anisotropic Lattice QCD"Physical Review D. 66. 094506(22) (2002)
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[Publications] 石井理修, 菅沼秀夫, 松古栄夫: "Scalar Glueball Mass Reduction at Finite Temperature in SU(3) Anisotropic Lattice QCD"Physical Review D. 66. 014507(5) (2002)
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[Publications] 土井琢身, 石井理修, 岡真, 菅沼: "The Quark-Gluon Mixed Condensate in SU(3)c Quenched Lattice QCD"Physical Review D. (印刷中). (2003)
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[Publications] 石井理修, 菅沼秀夫: "A Remark on the Large Difference between the Glueball Mass and Tc in Quenched QCD"European Journal of Physics A. (印刷中). (2003)
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[Publications] 福島昌宏, 菅沼秀夫, 千葉敏: "Instanton and Monopole in External Chromomagnetic Fields"Progress of Theoretical Physics. 107. 1147-1161 (2002)