2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12640289
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
武藤 巧 千葉工業大学, 情報科学部, 助教授 (60212247)
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Keywords | 高密度核物質 / 中性子星 / K中間子凝縮 / ハイペロン / P波相互作用 / 状態方程式 / 準安定状態 / 自己束縛状態 |
Research Abstract |
中性子星内部の高密度ハドロン物質相として,ストレンジネス量子数を持つフェルミ粒子(ハイペロン)が混在したハイペロン物質中で,カイラル対称性を基礎にしてs波及びp波のK中間子-バリオン相互作用を取り入れ,K中間子凝縮の発現機構と特徴を検討してきた。 今年度は,臨界密度を越えた密度領域でK凝縮相の状態方程式(EOS)を得,系の特徴,特に中性子星の内部構造への影響について議論した。結果は,ハイペロンの混合によるEOSの軟化に加えてK凝縮による軟化が加わるため,ハイペロン物質中でのK凝縮相のEOSは軟化が顕著になる。そのために系の圧力が負になる密度領域ができるが,その場合に,一般相対論的静流体平衡を与える式を解くことによって,重力によらずに任意の大きさでコンパクトな星として存在でき,中性子星の表面までK凝縮相の高密度状態になるような一種の自己束縛状態が得られることを示した。「K凝縮による自己束縛状態」は熱力学的に準安定な状態を含み,有限の寿命が経過した後,1次相転移の結果として通常のハイペロン物質相とK凝縮相の2相構造をもつ安定な中性子星へ崩壊することを示した。また,崩壊するまでの寿命を,半古典的に評価した。今後の課題として,凝縮による状態方程式の著しい軟化を抑制する効果として,(i)特に高密度で主要な引力をもたらすs波K-バリオン相互作用に対する相対論的効果を取り入れること,(ii)バリオン-バリオン間有効相互作用の取り入れ方の検討が挙げられる。更に,「K凝縮による自己束縛状態」をもつ中性子星の形成過程について系統的に検討することによって,その存在の可否と観測との整合性を明らかにすることが必要である。 以上の結果は日本物理学会での講演,国内及び海外で開催された研究会,国際会議で公表した。今後,以上の結果について,更に詳細に検討を加えた上で,論文にまとめるべく準備中である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] T.Muto: "Meson Condensations in High-Density Matter"Progress of Theoretical Physics, Supplement. (出版予定). (2004)
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[Publications] T.Muto: "Kaon condensation in hyperonic matter and properties of neutron stars"Nuclear Physics A. (出版予定). (2004)
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[Publications] T.Muto: "Kaon Condensation in Hyperonic Matter and Structure of Neutron Stars"Progress of Theoretical Physics, Supplement. (出版予定). (2004)