2000 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ構造中のコヒーレント音響フォノンとそのダイナミクス
Project/Area Number |
12640304
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田村 信一朗 北海道大学, 大学院・工学研究科, 教授 (80109488)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 之博 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助手 (00281791)
水野 誠司 北海道大学, 大学院・工学研究科, 講師 (90222322)
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Keywords | ナノ構造 / フォノン / 超格子 / 群速度 / THz / FDTD法 / フォノン結晶 |
Research Abstract |
本研究の目的はナノスケールの金属、半導体薄膜、へテロ構造、超格子などの系におけるフォノンのダイナミクスを理論的に解明することである。研究初年度である平成12年度においては、(1)現実の有限超格子中の群速度に対する解析を、波束の伝播シュミーレーションと、転送行列法に基づく解析計算により展開した。無限周期超格子においてフォノンの伝播が禁止される周波数禁制帯近傍で群速度は期待通り一旦0に近づくが、禁制帯内部では予想されるように0とはならず、むしろ驚くべきことに、許容帯(バンド)中の値に比べて大きく上回ることが見い出された。この増大は超格子の周期数に依存し、またゾーン端(または中心)と、ゾーン内部の禁止帯では定性的に異なることを明らかにした。しかしながら、この群速度の増大は禁制帯内部ではフォノンの透過率が小さいことより超格子中の熱伝導度の増加に寄与することはなく、むしろバンド端近傍での群速度の落ち込みにより(バンド端では状態密度も大きい)、実験結果のように熱伝導度の低下をもたらすものと予想される。本研究の結果を踏まえた熱伝導度の定量的解析は次年度以降の課題である。(2)基盤(A)中に円筒状物質(B)が埋め込まれたフォノン結晶(2次元周期構造)における分散関係の計算を、平面波展開法とFDTD法(Finite Difference Time Domain法)により行った。前者の方法は簡便ではあるが、A、B物質間の音響不整合が大きい場合に収束性が悪く、特にB物質が液体や真空である場合には、非物理的な平坦なエネルギーバンドが生じてしまう。この欠点を補うためにFDTD法を適用し、はじめて金属-液体、金属-真空の組み合わせからなるフォノン結晶における分散関係を得ることに成功した。特に後者の場合にはフォノンの散乱効果が大きく、ブリルアンゾーン領域全体にわたるエネルギー禁止帯の出現が見い出された。これはへテロ構造において無振動環境を実現する上で、大変興味深い結果である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Y.Tanaka: "Band structure of acoustic waves in phononic lattices : Two-dimensional composites with large acoustic mismatch"Physical Review B. 62-11. 7387-7392 (2000)
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[Publications] K.Imamura: "Phonon-packet propagation through solid-liquid interfaces : resonant effects in the presence of a superlattice"J.of Phys. : Condens.Matter. 12. 9843-9855 (2000)