2001 Fiscal Year Annual Research Report
有機導体における超伝導転移現象の量子振動効果を用いた研究
Project/Area Number |
12640342
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊東 裕 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (10260374)
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Keywords | 有機超伝導体 / ドハース・ファンアルフェン効果 / シュブニコフ・ドハース効果 / 超伝導減衰因子 / 超伝導ゆらぎ / 2次元性 |
Research Abstract |
有機超伝導体κ-(BEDT-TTF)_2Cu(NCS)_2の示す超伝導転移現象を探るため、2次元フェルミ面での量子振動効果に現れる、超伝導による減衰因子の測定および解析を行った。 これまで測定してきた磁化率の量子振動(ドハース・ファンアルフェン効果)に加え、電気抵抗の量子振動(シュブニコフ・ドハース効果)を既存のヘリウム3クライオスタットと購入した超伝導磁石により発生した0.55K、9Tの低温磁場下において測定した。シュブニコフ・ドハース効果は6.8T以上の磁場で観測された。また7.3T以下では振動振幅の低減が見られた。この振動減衰の原因を探るためヘリウム3クライオスタットに装着できる圧力セルを製作し、2kbarの圧力下で実験を行った。圧力により超伝導を抑制した状態では振動減衰は見られず、先の減衰因子が超伝導によるものであることが明らかになった。この結果は、2002年春の日本物理学会において発表予定である。しかしながら既存の装置で得られる0.55Kでは解析に使える磁場範囲が狭く、シュブニコフ・ドハース効果における超伝導減衰因子の定量的な解析に問題が残った。これは今後、希釈冷凍機による測定が必要である。 一方、前年度に引き続きドハース・ファンアルフェン効果に現れる超伝導減衰因子の角度依存性に関する解析を進め、超伝導及びそのゆらぎ効果の顕著な2次元性を明らかにした。この成果を論文として発表した。また常伝導域の2次元性との関連を調べるため電気抵抗異方性の温度依存性を測定し、反強磁性相関との関係などについて他の物質と比較した。 また、他のκ型BEDT-TTF塩あるいはBO錯体でも量子振動効果の測定を試みたが、少なくとも0.55Kまでは超伝導転移領域における量子振動効果を測定するに至らなかった。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] H. Ito, G. Saito, T. Ishiguro: "Antiferromagnetism and Superconductivity of κ-(BEDT-TTF)_2-Cu[N(CN)_2]X (X=Br, Cl)"Journal of Physics and Chemistry of Solids. 62. 109-112 (2001)
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[Publications] H. Ito, N. J. Clayton, P. J. Meeson, S. M. Hayden, M. Springford, G. Saito: "de Haas-van Alphen study of two-dimensional superconductivity in κ-(BEDT-TTF)_2Cu(CNS)_2"Synthetic Metals. 120. 819-820 (2001)
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[Publications] N. J. Clayton, S. M. Hayden, P. J. Meeson, H. Ito, G. Saito: "De Haas-van Alphen oscillations in the supercondcuting fluctuation region of κ-(BEDT-TTF)_2Cu(CNS)_2"Journal of Magnetism and Magnetic Materials. 226-230. 266-268 (2001)
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[Publications] N. J. Clayton, H. Ito, S. M. Hayden, P. J. Meeson, M. Springford, G. Saito: "Superconducting Fluctuations and the Reduced Dimensionality of the Organic Superconductor κ-(BEDT-TTF)_2Cu(NCS)_2 as observed through Mesurement of the de Haas-van Alphen Effect"Physical Review B. (in press). (2002)