2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12640363
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Research Institution | RIKEN (The Institute of Physical and Chemical Research) |
Principal Investigator |
山崎 展樹 理化学研究所, 磁性研究室, 先任研究員 (00271528)
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Keywords | 磁性人工格子 / 重希土類金属 / 弗化鉄 / フラストレーション / 超交換相互作用 / 磁気異方性 / 競合 / 次元クロスオーバー |
Research Abstract |
平成12、13年度の研究結果をもとにして、交換相互作用や磁気異方性に関して競合の起こる系を磁性人工格子(多層膜)の形で人工的に作製し、新しい磁性発現の可能性を検討した。磁気異方性の競合する系は重希土類金属に属するエルビウムErとテルビウムTbを交互積層した人工格子によって実現され、c軸方向を磁化容易軸とするErとc面内を磁化容易方向とするTbの積層界面における磁気異方性競合によって、Erのc面内磁化成分のみがバルクとは異なった長距離秩序を示すことが分かった。その一方でc軸方向の磁化成分はEr、Tb共にバルクと同じ長距離秩序を示し、磁気異方性競合はスピン成分に対して個別に影響を与えることが判明した。交換相互作用の競合する系は、本質的に超交換相互作用の競合が内在する弗化鉄FeF_2の薄膜化によって実現された。FeF_2はZnF_2のような結晶構造が同じであるが非磁性な物質によって希釈してランダムさを導入した場合に超交換相互作用の競合によってフラストレーションが誘起されることがバルク物質において確認されているが、本研究では結晶方向を意図的に選択して結晶成長させた厚さが数原子層分しかない超薄膜において、特定の交換相互作用のみを強調させることによってランダムさを導入することなく交換相互作用の競合を引き起こすことに成功した。膜厚減少に伴って磁性の3次元から2次元への次元クロスオーバーを確認したのみでなく、反強磁性転移温度における交換相互作用の競合の効果が1原子層周期で現れることを見いだした。また今年度は次のステップへの予備実験として磁性と超伝導の競合する人工格子を実現するために、MgB_2薄膜をMBE装置を用いたMgとBの同時蒸着法により作製し、薄膜MgB_2においても超伝導転移が起きることを確認した。
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[Publications] Hiroki Yamazaki, Junko Satooka: "Structural and magnetic properties of FeF_2(001)/ZnF_2(001) and FeF_2(110)/ZnF_2(110) superlattices"Journal of Physics : Condensed Matter. (印刷中).
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[Publications] 山崎展樹他: "ナノテクノロジーハンドブック"株式会社オーム社(印刷中).