2000 Fiscal Year Annual Research Report
低次元量子反強磁性系の低エネルギー励起状態の関与する光散乱スペクトルの理論計算
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12640366
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
夏目 雄平 千葉大学, 自然科学研究科, 教授 (80114312)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 隆史 千葉大学, 理学部, 教授 (70189075)
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Keywords | 磁気ラマン散乱 / 梯子構造反強磁性体 / 交換散乱機構 / 量子スピン系 / シングレット基底状態 / トリプレット対の励起 / 数値対角化計算 / 摂動論 |
Research Abstract |
低次元反強磁性体はスピンの量子性のため、古典的なネール秩序のある場合とは異なる顕著な特質を持つ。特に基底状態がシングレットであり、その上にエネルギーギャップgapを持っている。このような系の代表として、本研究では梯子系反強磁性系を取り上げ、磁気励起によるラマン散乱の理論計算を行った。対応する実験としては、東大物性研上田寛らによって、合成されたCaV_2O_5のラマン散乱がある。それによると、gapの2倍あたりに非対称型のスペクトル構造が現れている。そこで、これの理論的説明を試みたところ、極めて良い一致をみた。この結晶は梯子の足の交換相互作用と横木のそれとの比が0.1程度であるために、対角化計算と摂動計算の結果が大変良く一致し、実験結果の定量解析が成功したといえる。 さらに、この比を大きくしてゆく際のスペクトル変化を理論的に調べた。上記の構造はgapの2倍あたりの第1peakと5倍程度の第2peakに分かれてゆく。そして、前者の強度が弱くなる一方、後者の強度は強くなってゆく。この現象の起因を理論的に解析した。それは、横木の上にSinglet dimerが並ぶ構造を基底状態と考え、横木上にtriplet dimerが2つ励起される構造を励起状態とした。それにより、前者の状態はtriplet dimerが自由に動き回る非局所的な状態であるのに対して、後者は2つのtriplet dimerがその距離を最近接に保って束縛されて励起される状態であることがわかった。交換散乱機構は最近接に働く反強磁性相互作用が寄与をしているので、結果的に第1peakよりも第2peakが強いことになる。この第2peakは、実験的には、かなりの高エネルギーの位置に強い構造として現れているはずである。事実、Sr_<14-x>Ca_xCu_<24>O_<41>のラマンスペクトルには2900cm^<-1>程度のところに鋭い磁気的構造が報告されており、それの起因が未解決であった。本研究はその構造の解析に有力な手がかりを与えることになった。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Toshihiko Suzuki,Shinichiro Tada,Yuich Watabe and Yuhei Natsume: "Calculation of Magnetic Raman Spectra by the Exchange-Scattering in Antiferromagnetic Ladder with Rwo-Legs"Progress of Theoretical Physics (Kyoto). Suppl.No.138. 523-524 (2000)
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[Publications] Kensuke Doi,Yuhei Natusme: "Calculation of Bose-Einstein Condensations and Characteristic Features of Fluctuations for Systems with and without a Vortex in Two-Component Alkali Atom Gases"Journal of the Physical Society of Japan. Vol.70,No.1. 167-172 (2001)
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[Publications] Yuhei Natsume and Ryo Natori: "Theoretical Study of Magnetic Properties of the Triangulated Kagome Lattice-Magnons in the Heisenberg Model and their Quantum Effects"Journal of the Physical Society of Japan. Vol.69,Suppl.A.. 347-354 (2000)
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[Publications] Shinichiro Tada,Toshihiko Suzuki and Yuhei Natsume: "Numerical Study of Magnetic Raman Scattering Spectra in Ladder Antiferromagnetes"Activity Reports (ISSP). 2000. 186-187 (2000)
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[Publications] 多田晋一朗,夏目雄平,鈴木敏彦: "-量子反強磁性系シングレット基底からの磁気ラマン散乱の理論計算:はしご系を例として"光物性. 2000年号. 221-224 (2000)
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[Publications] 夏目雄平,中山隆史 他: "物理学データブック"朝倉書店. 250 (2001)