2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12640367
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高山 一 東京大学, 物性研究所, 教授 (40091475)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福島 孝治 東京大学, 物性研究所, 助手 (80282606)
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Keywords | スピングラス / エイジング現象 / 液滴理論 / 熱活性化過程 / 臨界緩和 / 温度シフト過程 / カオス効果 / モンテカルロ法 |
Research Abstract |
短距離相互作用型のイジングスピングラス(ISG)模型におけるエイジング現象についてモンテカルロ法によるシミュレーションを行い、結果を実空間のスピン相関に基づく液滴理論と対比させながら解析した。液滴理論は、1)系を急冷した後の待ち時間twまでにスピングラス(SG)秩序が熱活性化過程によつてゆっくりと成長していく過程を与える、平均SGドメインサイズR(tw)の成長則と、2)twからさらに時間tを経た時に観測される諸物理量に対する、長さスケールR(tw)と時間tのスケールで外場に対して応答できる液滴励起のサイズL(t ; tw)とを用いたスケーリング表式、とからなる。この二段階構成を踏まえてシミュレーション結果を解析し、本年度は以下の研究成果を得た。 I]4次元ISG模型の等温エイジング過程を詳細に調べ、R(tw)の成長則が、液滴理論が予言する通り、SG転移温度近傍の臨界緩和と低温側での熱活性化過程による緩和との間でクロスオーバーを示すことを初めて明らかにした。。さらに2)についてL(t ; tw)がR(tw)と同程度になる時間領域において、液滴励起エネルギーが異常に小さくなる(L(t ; tw)に依らなく)ことを見出し、これが、実験で観測されている、ゼロ磁場冷却磁化と磁場中冷却磁化の違いを与えることを示した(速報論文を投稿、本論文を準備中)。 II]交流磁化率を通して3次元ISG模型の温度シフト過程を調べた。3次元系ではシミュレーションから導かれるR(tw)は液滴理論とよい一致を示さないが、数値的に得られたR(tw)を用いても、2)のスケーリング則はよく成り立っていることが検証された。特に、カオス効果(または若返り効果)の前兆と考えられる現象を、3次元系のシミュレーションで初めて見出した(投稿論文を準備中)。
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