2000 Fiscal Year Annual Research Report
量子効果が強い系における磁化の発生機構とダイナミッタス
Project/Area Number |
12640368
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮下 精二 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (10143372)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斉藤 圭司 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手
|
Keywords | 量子スピン系 / 量子ダイナミックス / 不純物誘起磁化 / 光誘起相転移 / スピンパイエルス相転移 / ESR / 非断熱遷移 |
Research Abstract |
本研究では、量子スピン物性の観点から進めるとともに、理論的に予測されている諸現象を実現する物質設計の提案などを通して、新しい物質の性質の開発を計画した。具体的には磁化の動的制御の機構の研究を量子力学的なミクロな立場と、統計力学的なマクロの立場の両面から進めるべく、以下の諸テーマに取り組んだ。格子が変形可能な場合のスピンパイエルス転移の微視的研究を行った。特に、S=1の系でのスピンパイエルス転移が一次転移を示し、ハルデーン・ダイマー間のドメイン壁構造など新しい状態を明らかにした。図にこのドメイン壁構でのボンドの変位とハルデーンの指標であるストリング秩序変数を示す。右側ではボンドが一様でハルデーン状態にあるのに対し、左側ではボンドが交代的に変化しスピンパイエルス状態になっていることがわかる。分子磁性体の量子ダイナミックスに関しては、特に散逸効果を調べ、実験の定量的な解析が可能になるようにする。Mn_<12>やFe_8では非断熱遷移の場合のエネルギーギャップが非常に小さく解析が困難な点が多かったが、逐次的な非断熱遷移の結果単純な指数関数でない緩和が生じることを明らかにし、対応する実験との対応を調べた。また、最近進んでいるV_<15>などエネルギーギャップが大きな分子での掃引磁場下での磁化の運動を解析し「磁気的フェーン現象」の考え方を導入した。また、ギャップが小さい場合には、逐次的な非断熱遷移の結果単純な指数関数でない緩和が生じることを明らかにし、対応する実験との対応を調べた。量子計算を実行する上で操作自身の誤差の伝搬によって計算結果が大きな影響を受けることを量子ダイナミックスの立場から明らかにした。これらの研究に関してグローニンゲン大学のH.De Reaedt教授やグルローブルのB.Barbara、W.Wernsdorfer博士らと密接に連絡を取っている。量子ゆらぎが強い系でのESRに関しては、ダイナミカルシフトの相互作用のタイプへの依存性や外磁場の強さへの依存性、系と外磁場の幾何学的関係を、吸収線に対応する複素帯磁率を久保公式で直接数値的に求める方法を開発し詳しく調べた。また、反強磁性共鳴におけるゆらぎの効果も明らかにした。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] T.Arimori and S.Miyashita: "Phase Diagram of Ising-Like Heisenberg Model on the Triangular Lattice with Degenerate Orbital Effect."Journal of the Physical Society of Japan. 69・7. 2250-2266 (2000)
-
[Publications] H.Onishi and S.Miyashita: "Temperature Dependence of Spin and Bond Ordering in a Spin-Peierls System."Journal of the Physical Society of Japan. 69・8. 2634-2641 (2000)
-
[Publications] A.Hams,H.DeRaedt,S.Miyashita and K.Saito: "Feedback effect of Landau-Zener-Stueckelborg transitions in magnetic systems."Physical Review B. 62・21. 13880-13883 (2000)
-
[Publications] A.Ogasahara and S.Miyashita: "ESR of Antiferromagnetic Cluster"Journal of the Physical Society of Japan. 69・12. 4043-4048 (2000)
-
[Publications] S.Watarai,S.Miyashita and H.Shiba: "Entropy effect on the magnetization process of heragonal XY-like Heisenberg antiffromagnets."Journal of the Physiral Society of Japan. 70・2. 532-537 (2001)
-
[Publications] C.Yasuda,S.Todo,K.Harada,N.Kawasluma,S.Miyashita and H.Takayen: "Classical Correlation-Length Exponent in Non-Universal Quantum Phase Transition of Dilutd Heisenberg Antiferromagnet"Physical Review B. 70(in press).