2000 Fiscal Year Annual Research Report
大規模計算機シミュレーションによる絡み合い高分子液体の非線形ダイナミクスの研究
Project/Area Number |
12640372
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小貫 明 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (90112284)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 量一 京都大学, 大学院・理学研究科, 講師 (10263401)
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Keywords | 高分子溶融体 / 絡み合い / 分子動力学シミュレーション / 非線形ダイナミクス / レオロジー / せん断流 |
Research Abstract |
高分子液体の絡み合い効果によるレオロジーに関してはこれまで既に膨大な量の研究がなされており、最近の高分子物理学の成果につながった.特に平衡からのずれが小さい線形領域ではレプテーション理論が大成功を収めている。しかし絡み合い高分子系では緩和時間が著しく長いために,実験的にも変形に対する線形応答を観測することはむしろ例外である。そもそも高分子では熱的にも力学的にも極めて容易に非線形・非平衡領域に突入するのであり、我々はここに様々な基礎的問題群があると考える。レオロジーの問題はその代表的な一例である。 高分子液体の複雑な非線形・非平衡領域のダイナミクスに関しては理論的理解が明らかに不足しており,計算機シミュレーションによる微視的物理過程への洞察が重要である。我々はGrestとKremerらによるバネビーズモデルを用いて大規模な分子動力学シミュレーションを行い,短い鎖状分子からなる過冷却液体のレオロジーを調べた。その結果,我々はすでに単純液体や絡み合いのない短い鎖状分子からなる高分子液体に対して,低温でガラス化するに従い発現する著しい非線型レオロジーとその微視的メカニズムとの関連を明らかにした。今年度はより大規模な数値計算により、絡み合いがあるような長い鎖状分子系(モノマー数100)の非線形・非平衡状態における動的性質の解明を研究対象とした。その結果平衡状態においては絡み合い点の可視化に初めて成功し、さらにせん断流下においてそこが実際の絡み合い点に成長する様子も可視化することに成功した。絡み合い高分子溶液の著しい非線形レオロジー、変形による絡み合い点の消滅によることも確かめられた。成果の公表は準備中である。これらの研究成果をより定量的に信頼性に高いものにするには、今後さらに長い高分子鎖からなる系を扱う必要がある。
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[Publications] R.Yamamoto,W.Kob: "Replica-exchange molecular dynamics simulation for supercooled liquids"Physical Review E. 61. 5473-5476 (2000)
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[Publications] W.Kob,C.Brangian,T.Stuhn,R.Yamamoto: "Equilibrating glassy systems with parallel tempering"Computer Simulation Studies in Condensed Matter Physics XIII;Ed.D.P.Landau,S.P Lewis, and H.B.Schuttler (Springer, Berlin,2001). 13. 153-162 (2001)
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[Publications] A.Onuki,A.Furukawa: "Phase transitions of binary alloys with elastic inhomogeneity"Physical Review Letters. 86. 452-455 (2001)