2001 Fiscal Year Annual Research Report
カオス系を含む非線形系における分布の発展方程式および非平衝状態の解析的研究
Project/Area Number |
12640375
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田崎 秀一 早稲田大学, 理工学部, 助教授 (10260150)
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Keywords | 不可逆性 / 分布関数の方法 / フラクタル分布 / 非平衡定常状態 / 緩和モード / C^*代数 / 無限量子系 / カオス |
Research Abstract |
本研究ではいくつかの古典的写像系、無限量子系における緩和現象と定常状態について解析的かつ厳密に調べ、以下の結果を得た。1)エネルギー座標を含む多重パイこね変換のエントロピー生成:多重パイこね変換は、双曲型力学系の一般的性質を明らかにするために導入されたモデル系である。本研究では、代表者らが導入した運動エネルギーに相当する座標を含む多重パイこね変換において、無限多粒子系としてのエントロピー生成を、粗視化エントロピーと相対エントロピーの双方から吟味し、定常状態では両者が巨視的スケーリング極限で一致することを見い出した。粗視化エントロピーは、定常状態のフラクタル性に起因して生成し、相対エントロピーは熱流の意味が熱浴によって異なることから増大する。物理的に異なる起源をもつ両者が一致したことは興味深い。2)間欠性を示す写像の分布の発展演算子のスペクトル分解:間欠性を示す一次元写像の発展演算子において、階段状の分布関数のクラスに限定することにより、スペクトル分解を構成した。間欠性のため単位区間[0,1]上に連続スペクトルが現れ、その端点z=1は固有値である。時間変化に対する連続スペクトルの寄与やz=1に対する固有関数の性質は間欠性カオスに起因する揺らぎがガウス型か、長時間相関を持つかで、異なることが分かった。3)量子1次元導体のエントロピー生成:量子1次元導体において、初期状態に関する相対エントロピー変化を調べ、定常状態では、それが熱力学から期待されるものと一致することを確かめた。さらに、非平衡熱力学の側面から相対エントロピーを一般のエントロピーとすることの妥当性を検討し、不十分な点があることを明らかにした。4)無限量子系の非平衡統計力学:無限に拡がった複数の熱浴が有限系を仲立ちとして結合した系の非平衡統計力学を調べ、量子1次元導体で得られたものと同様の結果を得た。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] H.Honda, S.Tasaki, A.Chiba, H.Ogura: "Relaxation Phenomenon measured as dynamical specific heat in first-order phase transition of molecular crystal"Physical Review B. (掲載予定). (2002)
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[Publications] S.Tasaki: "Irreversibility in reversible multibaker maps"Advances in Chemical Physics. 122. 70-107 (2002)
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[Publications] P.Gaspard, S.Tasaki: "Liouvillian dynamics of the Hopf bifurcation"Physical Review E. 64 No.056232. (2001)
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[Publications] S.Tasaki: "Nonequilibrium Stationary States of Noninteraction Electrons in a One-dimensional Lattice"Chaos, Solitons and Fractals. 12. 2657-2674 (2001)
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[Publications] S.Tasaki: "Current Fluctuations in Nonequilibrium Steady States for a One-Dimensional Lattice Conductor"Quantum InformtionIII eds. T.Hida K.saito. 157-176 (2001)
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[Publications] 田崎秀一: "スピン・エコーとLoschmidtの魔"数理科学. 7月号. 37-42 (2001)