2000 Fiscal Year Annual Research Report
気体中のポジトロニウムの熱化に対する気体分子永久双極子モーメントの効果
Project/Area Number |
12640384
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長嶋 泰之 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (60198322)
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Keywords | 陽電子消滅 / ポジトロニウム / 熱化 / 永久双極子モーメント / シリカエアロジェル / 運動量移行断面積 |
Research Abstract |
シリカ微粒子が3次元的ネットワークを形成したシリカエアロジェルと呼ばれる物質に陽電子を入射すると、陽電子はシリカ微粒子を通り抜けながら減速し、やがて、微粒子内部あるいは表面でポジトロニウムを形成する。ポジトロニウムは、シリカに対する仕事関数が負であるために、微粒子間の空隙に飛び出し、微粒子表面と衝突しながらエネルギーを失い、やがて自己消滅する。シリカエアロジェルを気体中に置けば、気体分子が空隙中に入り込むため、ボジトロニウムはシリカ微粒子のみならず、気体分子とも衝突することによってエネルギーを失う。 ポジトロニウムの固有状態には、パラポジトロニウムとオルソポジトロニウムがある。前者は2光子に自己消滅するのに対し、後者は3光子に自己消滅する。しかしながら、磁場をかけてやると、これらの状態が混合し、新たな固有状態ができる。見かけ上、3光子にしか自己消滅しないオルソポジトロニウムが、磁場中では2光子に自己消滅することになる。このため、陽電子消滅法による物性研究でしばしば用いられる2光子角相関法を用いて、オルソポジトロニウムの運動量分布を測定できるようになる。しかも、オルソポジトロニウムの寿命は、磁場の強さに依存する。したがって、磁場の強さを変えながらオルソポジトロニウムの運動量分布を2光子角相関法で測定することにより、ポジトロニウムの熱化の様子がわかる。また、そのデータからは、ポジトロニウム-気体分子散乱における運動量移行断面積を求めることが可能である。 本研究では、このことを利用して、気体中におけるポジトロニウムの熱化の研究を行っている。本年度は、neo-C_5H_<12>とiso-C_5H_<12>の2種類の気体中におけるポジトロニウムの熱化の比較を行った。この2つの気体分子のうち、前者は永久双極子モーメントが0であるのに対し、後者は有限の値を有する。現在、データ解析を行っている。
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