2001 Fiscal Year Annual Research Report
気体中のポジトロニウムの熱化に対する気体分子永久双極子モーメントの効果
Project/Area Number |
12640384
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長嶋 泰之 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (60198322)
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Keywords | 陽電子消滅 / ポジトロニウム / 気体 / 熱化 / 永久双極子モーメント |
Research Abstract |
平成12年度には、シリカエアロジェルの空隙中にneo-C_5H_<12>やiso-C_5H_<12>を導入し、その中におけるポジトロニウムの運動量分布を2光子角相関法を用いて測ることによって、ポジトロニウムの熱化の様子を測定した。13年度には、そのデータ解析を行った。 neo-C_5H_<12>は永久双極子モーメントが0であるのに対し、iso-C_5H_<12>は0でない永久双極子モーメントを持っている。したがって、ポジトロニウムがこれらの気体分子と散乱する際、永久双極子モーメントがポジトロニウムの熱化に及ぼす影響が大きいものとすれば、これらの気体のうちiso-C_5H_<12>中の方がneo-C_5H_<12>中に比べてポジトロニウムの熱化が速いはずである。しかしながら、得られたデータは、むしろneo-C_5H_<12>の方がポジトロニウムの熱化が速いということを示している。このことから、ポジトロニウムの熱化に対する永久双極子モーメントの効果は、予想外に小さいと言うことができる。 ただし、今回用いたneo-C_5H_<12>やiso-C_5H_<12>は蒸気圧が低いので、ポジトロニウムの熱化の測定の際に圧力を低く設定しなければならない。しかも分子量が大きいため、データにはポジトロニウムの熱化の効果が現れにくい。したがって、データ解析は容易ではなく、まだ最終的な結論には至っているとはいえない。今後、さらに時間をかけて解析を行う予定である。また、永久双極子モーメントをもつ他の気体についても、検討していくことを計画している。
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