2001 Fiscal Year Annual Research Report
巨大衝突に始まる月形成:岩石破片円盤形成から揮発性物質散逸まで
Project/Area Number |
12640405
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Research Institution | TOKYO INSTITUTE OF TECHNOLOGY |
Principal Investigator |
中澤 清 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (10025455)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榎森 啓元 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (30262257)
井田 茂 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (60211736)
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Keywords | 月の起源 / 月物質 / 地球の起源 / 衛星 / SPH流体計算 / 角運動量 / 巨大衝突説 / 重力多体系 |
Research Abstract |
本研究は巨大衝突を起源とする衛星、特に月の形成を数値実験により再現し、その基礎過程の理解と月に見られる観測的特徴との比較・検討を目的として行なわれた。地球サイズの天体と火星サイズの天体との衝突によって月が誕生したとする巨大衝突説は現在最も多くの研究者が月形成の第一候補として挙げるモデルである。本研究では大きく以下の2点に対象を分けて研究を推進した。 1.衝突の結果形成された周地球原始月円盤の力学的振舞(井田) 月質量の3倍程度の大量の物質が、地球半径2倍以内の狭い領域に分布する円盤を想定し、円盤内部での粒子集団の振舞を多体重力計算により再現した。高い円盤の面重量密度が円盤に密度波を励起し、地球への質量落下とロッシェ半径外への質量輸送を同時に実現した。円盤の初期条件によって、複数の衛星の形成も起こり得ることが明らかとなり、現在の月を形成する初期円盤の質量に、約3倍月質量という上限があることが分かった。 2.天体規模の衝突過程の基礎的研究(中澤・榎森) 流体数値計算による巨大衝突過程の再現を行なった。研究の目標は月の形成にあるが、直接月形成とは結び付かないパラメーター領域にまで踏み込んだ再現実験から、可能な限り適用範囲の広い理論構築を行なった。衝突の結果、火星サイズの天体は原型を留めない程の大変形を受ける。しかし、自己重力が効率的に質量の分散を抑制し、再びしかも即座に一つの衛星に復元することが分かった。さらに比較的広いパラメーター範囲で、復元した衛星が地球と衝突しない楕円軌道に入る場合が確かめられた。このことは巨大衝突説に新たな方向性を与える第一歩である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] K.Iwasaki, H.Tanaka, K.Nakazawa, H.Emori: "The Gas Drag Effect on the Orbital Instability of the Protoplanet System"Publication of the Astronomical Society of Japan. 53・2. 419-436 (2001)
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[Publications] M.Nagasawa, S.Ida, H.Tanaka: "Origin of high orbital eccentricity and"Earth, Planets and Space. 53. 1085-1091 (2001)