2002 Fiscal Year Annual Research Report
月の地殻熱流量の再解析:ルナプロスペクタによるデータを利用した熱モデルの構築
Project/Area Number |
12640413
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Research Institution | The Institute of Space and Astronautical Science |
Principal Investigator |
水谷 仁 宇宙科学研究所, 惑星研究系, 教授 (00011578)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早川 雅彦 宇宙科学研究所, 惑星研究系, 助手 (40228557)
田中 智 宇宙科学研究所, 惑星研究系, 助教授 (30249932)
藤村 彰夫 宇宙科学研究所, 惑星研究系, 教授 (70173458)
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Keywords | 月 / 地殻熱流量 / プロスペクタ / クレメンタイン / 月地殻 / 重力 / 月地形 / 有限要素法 |
Research Abstract |
月の熱流量値はU, Thなどの難揮発性元素の月全体の存在度を推定する唯一の方法を与えるので、アポロ計画で得られた熱流量測定値を最近の月探査機によるグローバルなデータと比較し、新しい目で見直すことはきわめて重要である。このため本研究では、クレメンタイン衛星やルナ・プロスペクタ衛星による新しい地形、重力場、表面の元素組成などのデータを解析し、月の熱構造モデルの再検討をおこなった。 最初にアポロ熱流量計測値における、地形とメガレゴリスの効果について調査した。熱伝導率の低いメガレゴリスや地殻の厚さに水平的な不均質が存在すると月内部の温度分布が変化し、観測される熱流量値も変化することが明らかになった。特にアポロ15,17号着陸点の両方において、熱流量観測は海と高地の境界付近で行われたために、観測された熱流量値は平均的な海の値の10〜20%高めに測定されていることが明らかになった。 プロスペクター衛星による重力と地形データから地殻の厚さ分布のグローバル地図を2種類のモデル(厚い地殻、薄い地殻モデル)において作成した。これとTh存在マップを組み合わせて、月全面における熱流量分布マッピングをおこなった。これらと観測データの比較から、月全体のUのバルク存在度は20〜30ppbの範囲にある事が判明した。これは地球の上部マントルのU存在度(21ppb)やコンドライト(19ppb)に近く、これまで考えられていた程には、難揮発性元素のenrichmentは見られないことが明らかになった。これらの結論は月の組成全体の推定に大きな影響を与え、月の起源を考える上での大きな制約条件となる大きな結論である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Hikida, H., Mizutani, H.: "Tensile Strength of Asteroids Predicted from the Relation of Asteroid Size and Spin Period"Lunar and Planetary Science. XXXIII. 1444 (2002)
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[Publications] Oberst, J., Mizutani, H.: "A New Inventory of Deep Moonquake Nests Visible in the Apollo 12 Area"Lunar and Planetary Science. XXXIII. 1704 (2002)
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[Publications] 疋田肇, 水谷仁: "重力・地形データを用いた月地殻構造の推定"2002年度合同学会予稿集. P036-024 (2002)
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[Publications] 吉田信介, 宮崎ゆか, 田中智, 宝来帰一, 水谷仁, 藤村彰夫, 平井研一: "LUNAR-Aペネトレータによる月熱流量計測 : 非定常解析による月熱流量の推定"2002年度合同学会予稿集. P036-P003 (2002)
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[Publications] 疋田肇, 水谷仁: "粘性流体モデルを用いた玄武岩層の分布推定"2002年日本惑星科学会秋季講演会集録. 209 (2002)
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[Publications] Mizutani, H., Fujimura, A., Tanaka, S., Shiraishi, H., Yoshida, S., Nakajima, T.: "Mission Outline of Lunar-A"The Moon Beyond 2002 : Next Steps in Lunar Science and Exploration. 38 (2002)