Research Abstract |
大気大循環モデル(CCSR-NIES AGCM:水平解像度T21,鉛直層数20)で,山岳を取り除き,季節を1月に固定し,いくつかの理想的な海面温度(SST)分布と大陸分布を与えた場合について,それぞれ600日間の長時間積分を行い,出現するストームトラックと時間平均場との関係について解析した.ここで,ストームトラックは,対流圏上層の250hPa等圧面で,2.5日から6日の周期帯を持つ高度場変動の大きい領域として定義した. 実施した多数の数値実験の中で,時間平均場とストームトラックとの特徴的な関係を与えるものとして,以下の様な例が存在することが示された.まず,北半球にアジア大陸を模した矩形の大陸を仮定し,SST分布を東西一様で与えた実験では,大陸東岸の大気下層に傾圧度の高い領域が存在するにもかかわらず,ストームトラックはほぼ東西一様となる.また,全球で陸のない水惑星を仮定し,中緯度域における現実のSST分布をおおよそ近似するように,SST分布の南北勾配を中緯度域で東西波数1で変化させた実験では,中高緯度に定在波は存在せず,亜熱帯ジェットも東西一様にもかかわらず,ストームトラックはSST南北勾配の大きい領域の下流側で局在した.さらに,水惑星で,熱帯域においてSST分布を東西波数1で変化させた実験では,熱帯SST高温域の北側で形成される亜熱帯ジェットコアが存在する領域のはるか下流側で,ストームトラックが局在化した.また,これら全ての実験で現れたストームトラック領域で,時間平均場から擾乱への順圧エネルギー変換が生じていることが分かった. 以上の結果から,従来の研究において,ストームトラックが東西方向に局在化する原因と考えられてきた,大気下層の傾圧度や亜熱帯ジェット,あるいは順圧エネルギー変換率といった時間平均場の東西非一様性は必ずしも重要でないことが示された.また,中緯度におけるSST分布は,ストームトラックの局在化に大きな役割を果すことも示された.
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