2000 Fiscal Year Annual Research Report
縞状トゥファに記録される陸域気候情報の高解像度解読
Project/Area Number |
12640443
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
狩野 彰宏 広島大学, 大学院・理学研究科, 助手 (60231263)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬戸 浩二 島根大学, 理工学部, 助手 (60252897)
高橋 嘉夫 広島大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (10304396)
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Keywords | トゥファ / 安定同位体 / 微量元素 / 古気候 / 炭酸塩堆積物 |
Research Abstract |
縞状トゥファに記録される陸域気候情報を高精度で解読するために,本年度は試料採集に重点を置き,狩野が,愛媛県城川町・広島県東城町・岡山県新見市・岡山県北房町・富山県大山村等で縞状トゥファ試料と水試料の採集を行なった. 採集した縞状トゥファ試料は半分に切断し,1つを樹脂で固め,研磨薄片を作成した.組織を詳細に観察・検討した結果,方解石の結晶の充填度が高い部分が大雨の直後の増水時に堆積したことが明らかになった.この事は,X線マイクロアナライザー(EPMA:広島大学機器分析センター)を用いたCa X線強度の時系列解析の結果により定量化された.この方法により,過去の大雨のイベントが縞状トゥファの記録から復元される.しかし,現時点ではCa X線強度から降水量を評価するまでには至っていない.さらに,岡山県新見市で採集された試料には,大雨のイベントが粘土鉱物に富む層として記録されることも明らかになった.これは,洞窟内に堆積している粘土が洪水時に懸濁し,トゥファの表面に付着するためであると思われる.この記録は特に解像度がよく,誤差10日以内で大雨の時期を特定することが可能である. 残りの試料は自作のトゥファ切断機で縞状組織に平行な面で0.2mmごとに削り,酸素安定同位体比・方解石成分のMg/Ca,Sr/Ca比の測定に用いた.安定同位体比については,軽元素質量分析計(島根大学汽水域研究センター)で瀬戸と狩野が測定し,金属元素は希釈酢酸で溶解した試料を,新たに購入した高速イオンクロマトグラフと原子吸光光度計を用いて,狩野と高橋が測定した.その結果,当初の予測通り,これらの指標は水温の経年変化を記録していることが確認された.また,結果の精度と信頼度は酸素同位体比が最も良いことも判明した.これは,沢水の酸素同位体比が安定しているのに対し,Mg/Ca,Sr/Ca比は変動が激しいためである.
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Kano,Akihiro: "Origin of the gross morphology and internal texture of tufas of Shirokawa Town, Ehime Prefecture, southwest Japan"Journal of Geological Society of Japan. 106巻. 397-412 (2000)