2001 Fiscal Year Annual Research Report
ホスト・ゲスト錯形成による不斉認識の熱力学パラメータと分子構造との相関解明
Project/Area Number |
12640518
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Research Institution | OSAKA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
廣瀬 敬治 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 助教授 (10252628)
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Keywords | 不斉識別 / クラウンエーテル / アミン / 光学活性 / エンタルピー / エントロピー / 温度依存性 / 分子設計指針 |
Research Abstract |
クラウンエーテルとアミン類との錯形成においては、多くの場合に錯安定性の尺度の一つである錯安定度定数(K)の対数(1nK)が1/Tと直線関係を持ち、エンタルピー・エントロピー各効果を定量的に見積もり得る。この錯形成反応を用いれば、主に室温付近における錯形成能に基づき立体反発や受容体の基質捕捉部の空孔サイズと基質サイズの適合性など定性的な受容体-基質相補性を主な判断基準としたこれまでの分子設計に、エンタルピー・エントロピー各項を考慮した新たな判断基準を提案でき、精度の高い受容体設計に寄与しうるのではないかと考えられる。この考え方をさらに進め、不斉認識に展開するため、以下の三段階の研究計画を立てた。 (1)構造相関のつく複数の光学活性人工ホストと両鏡像体ゲストの合成(2)両鏡像体アミンとの錯形成能評価(3)熱力学パラメータを考慮した人工ホストの分子認識原理の解明 本年度は、光学活性ホスト分子の系統的な構造変化と錯形成能変化の相関にエンタルピー・エントロピーをもちいた定量的な考察を加えるために、互いに構造相関のある一群のホスト合成を試みた。当初計画に挙げた6種類のホストとゲスト3種類の合計9種類の新規ホストおよびゲスト化合物のうち、昨年度に合成したホスト3種類とゲスト3種類を含めて、すべてを光学活性体として合成することが出来た。現在、光学活性ホストの不斉認識能について検討をおこなっているところであり、今後、これらホストを用いてゲストアミンとの錯形成における温度依存性のさらなる検討に進む段階にまで来た。また、光学活性クラウンエーテルを用いた不斉認識の検討方法として高速原子衝撃質量分析スペクトルを用いた検討を行い、一級アミンの光学純度決定への検討を行った。本成果は報文としてまとまった。さらに、核磁気共鳴報を用いる方法および紫外可視吸収スペクトルを用いる不斉認識能の検討方法について、広範で詳細な検討を行い理論から実施までを幅広くあつかった報文をまとめた。この中には、本研究課題である、不斉認識能の温度依存性の成果の一部も紹介した。
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[Publications] Sawada M, Takai Y, Imamura H, Yamada H, takahashi S, Yamaoka H, Hirose K, Tobe Y, Tanaka J: "Chiral recognizable host-guest interactions detected by fast-atom bombardment mass spectrometry : application to the enantiomeric excess determination of primary amines"European Journal of Mass spectrometry. 7・6. 447-459 (2001)
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[Publications] Hirose K: "A practical guide for the determination of binding constants"J.Incl.Phenom. and Macrocyclic Chem.. 39・3. 193-209 (2001)