2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12640556
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
野崎 浩一 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助手 (20212128)
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Keywords | MLCT励起状態 / 一重項MLCT / 密度汎関数理論 / 光誘起電子移動 / 電子状態間遷移速度 |
Research Abstract |
1.超高感度発光測定装置の開発と一重項MLCT状態の寿命測定 Ru(II),Os(II),Re(I),Cu(I)錯体などの三重項MLCT状態は光誘起電子移動やエネルギー移動などを利用した分子素子を開発する上で重要な光活性種として期待されているが、それらの一重項MLCT状態の光物理的性質は最近に至るまで未知なまま残されている。本研究では、発光量子収率が10^<-8>レベルまで測定可能なピコ秒時間分解超高感度発光測定装置を製作し、これによってこれまで測定されたことのなかったFe(II)、Cu(I)、Ru(II)錯体の一重項MLCT状態からの発光を捕らえることに初めて成功し、これらの一重項MLCT状態の光物理的性質を明らかにすることができた。この結果については、2001年春季日本化学会で発表する予定である。 2.ADFを用いた電子状態間の遷移速度の予測 超高速動作する論理素子を設計する際、光誘起分子内電子移動、エネルギー移動、項間交差、励起状態の無輻射過程などの遷移速度を理論的に推定することができれば、開発効率が飛躍的に向上する。しかし、そのためには反応に伴う原子間距離の変化や溶媒の再配列についての精度の高い情報が必要であり、これまでは小さな分子にしか適用できなかった。本研究では、最近精度が向上した密度汎関数理論であるADFに着目し、これによって金属錯体などの大きな分子系についても各電子での正確な分子構造や溶媒分極などを計算し、電子状態間の遷移過程で放出されるエネルギーが溶媒の再配列と分子内振動にどのように分配されるかを見積もって遷移確率を評価することが可能であることを示した。(2000年光化学討論会と2000年環太平洋国際化学会にて発表)
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