2001 Fiscal Year Annual Research Report
生態系の群集構造が個体群進化に及ぼす効果の微生物生態系モデルを用いた解析
Project/Area Number |
12640615
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
中島 敏幸 愛媛大学, 理学部・生物地球圏科学科, 助教授 (70314945)
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Keywords | 進化 / 群集構造 / 細菌 / 原生動物 / 生態系モデル |
Research Abstract |
(1)資源-消費者-二次消費者からなる実験群集の長期培養経における細菌個体群の進化的変化の解析 前年度からの継続実験として資源としてグルコース、消費者として大腸菌(Escherichia coli)、二次消費者としてテトラヒメナ(Tetrahymena pyriformis)を用いたケモスタット培養系を、それぞれ2つの複製系を設け、約120日間培養した。ここで、大腸菌として、F-株、Hfr株、及びF-/Hfr混合株(両株の間に染色体レベルの組換えが生じる)を用いた合計3つの実験系を設けた。その結果、いずれの系においても大腸菌個体群中に長鎖型の変異が出現し正常型と共存していた。長鎖型は捕食者に食われにくい特徴を持つが、特にHfr株の系で個体群中の存在割合が大きかった。個体群密度変化については各系に特徴的な傾向がみられたが、上記の変化との関係については現在のところ不明である。 (2)生産者-消費者(分解者)-二次消費者からなる微小生態系(マイクロコズム)の構築 物質をリサイクルしながら自立的に持続する生態系における個体群の進化を解析するための実験系の構築を行った。具体的には、生産者としてクロレラ(Chlorella vurgaris)、消費者(分解者)として大腸菌(E. coli)、二次消費者としてテトラヒメナ(T. thermophila)を用いて微小生態系を作成し、光照射下で培養しこの系の安定性(持続性)を調べた。対照実験系としてその部分系を設けた。全体系の構成個体群は初期に遷移的な数の変動期を経て定常状態に入り存続した。また、部分系の結果から本微小生態系の種間相互作用に関して以下のことが明らかになった。E. ColiはC. vurgarisの細胞外代謝物及び死細胞からの溶出物を利用し増殖する。T. thermophilaは、E. coliを捕食し増殖するがC. vurgarisやその細胞外代謝物を利用し増殖することはできない。C. vurgarisは、培地中の無機塩及び光エネルギーにより増殖する。実験後半においては、顕微鏡下でわずかに長鎖型の大腸菌がみられたが、ほとんどは正常型であった。この理由は、リサイクル系では大腸菌の増殖率が低いためその捕食者であるT. thermophilaの個体群密度が低く維持され(上記のケモスタット系の/10から1/100程度)、大腸菌に対する捕食圧が低いためと考察された。
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