2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12640633
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
前田 ミネ子 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (70029700)
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Keywords | 細胞性粘菌 / 多細胞体 / 細胞間コミュニケーション / シグナル伝達 / DIF-1 / DIF合成不能変異体 / 低分子化合物 / 疎水性分子 |
Research Abstract |
植物ホルモンの例に認められるように、多細胞生物は細胞間情報伝達物質を介するさまざまな相互作用を発達させてきた。この相互作用に関与する物質を明らかにし、作用機構を明らかにすることは生物学上の重要課題である。細胞性粘菌のプロテインキナーゼERK2(Extracellular Signal Regulated Kinase 2)を欠損する突然変異体erkB-は、多細胞体を形成することができず、細胞の分化も起こらない。しかしながら、野生型細胞と混合すると、erkB-は野生型細胞とキメラ生物を形成し、正常な細胞分化を行うことができる。この事実に基づき、野生型細胞がerkB-の変異を救済する物質を分泌しているかどうかを調べ、1000-3000ダルトンの拡散性の物質が活性をもつことをつきとめた。この物質は、細胞性粘菌を単細胞世代から多細胞世代への移行を制御する新規な鍵物質である。本プロジェクトではこの物質の精製・同定を行ない、作用機構を解明ことを目標として取り組んだ。この過程で、既知の低分子疎水性化合物で、DIF-1として知られる柄細胞誘導活性をもつアルキルフェノンが、erkB-株の形態形成誘導能をもつことを明らかにした(Maeda & Kuwayama,2000;Kuwayama et al.,2000)。また、DIF-1に類似の化合物DIF-2,DIF-3も同様の活性を持つことを明らかにした(山本他、2000年日本植物学会大会発表)。さらに、英国のMRCのRob Kay博士(DIF研究の第一任者)との共同研究により極めて興味深い結果を得ることができた。彼の研究室で作製されたDIF合成不能変異株にも、erkB-株の形態形成誘導能が認められたのである。現在、この物質の精製と同定のために、HPLCによる解析に取り組んでいる。
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[Publications] Maeda,M.: "A diffusible factor involved in MAP-kinase ERK2-regulated development of Dictyostelium."Develop.Growth Differ.. 42. 275-284 (2000)
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[Publications] Kuwayama,H: "A novel role of differentiation-inducing factor-1 in Dictyostelium development, assessed by the restoration of a developmental defect in a mutant lacking mitogen-activated protein kinase ERK2."Develop.Growth Differ.. 42. 531-538 (2000)
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[Publications] Maeda,M.: "Developmental changes in the spatial expression of genes involved in myosin function in Dictyostelium."Developmental Biology. 223. 114-119 (2000)
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[Publications] Mitra,B.N.: "Loss of a member of the aquaporin gene family, aqp A affects spore dormancy in Dictyostelium."Gene. 251. 131-139 (2000)
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[Publications] 前田ミネ子: "単細胞生物と多細胞生物はなにが違うのか粘菌ゲノムは語る"科学. 70. 282-289 (2000)