2000 Fiscal Year Annual Research Report
光合成におけるチラコイド膜脂質の機能に関する分子生物学的解析
Project/Area Number |
12640635
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
和田 元 九州大学, 大学院・理学研究院, 助教授 (60167202)
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Keywords | 光合成 / シアノドクテリア / チラコイド膜 / ホスファチジルグリセロール / ラン藻 |
Research Abstract |
藻類や植物の葉緑体に存在するチラコイド膜は、光合成の初期過程の場であり、主にタンパク質と脂質によって構築されている。脂質としては、この膜に特徴的なモノガラクトシルジアシルグリセロール、ジガラクトシルジアシルグリセロール、スルホキノボシルジアシルグリセロール、ホスファチジルグリセロール(PG)が存在し、それらの脂質はチラコイド膜に疎水的な場を提供するばかりでなく、光合成の初期過程を担っている多くのタンパク質複合体の活性発現および安定化において重要な役割を担っているものと考えられている。しかし、チラコイド膜に存在する各脂質の生合成系がどのように制御され、各脂質が光合成の初期過程においてどのような特異的な機能を担っているかについては未だに謎である。 本研究では、ラン藻Synechocystis PCC6803から遺伝子操作により、チラコイド膜に唯一のリン脂質として存在するPGの合成欠損株を作製し、その変異株と野生株との光合成の特徴を比較することにより光合成におけるPGの特異的な機能を解析した。作製した変異株は、PGを含む培地では増殖することができるが、PGを含まない培地に移すと数回分裂した後に増殖を停止した。このとき、分裂にともなってPGの含有量も低下していた。これらの結果は、PGがこのラン藻の増殖に必須であることを示している。また、培地からPGを除くとPGの含有量の低下に伴って光合成活性が低下し、PGが光合成に必要であることが明らかとなった。さらに、PGが光合成の初期過程のどのステップに関わっているのかについて解析したところ、光化学系2の反応中心におけるQ_AからQ_Bへの電子伝達において重要な機能を担っていることが明らかとなった。
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Research Products
(1 results)